四四 宋江、呉用の計略によってついに祝家莊を撃滅する
扈成(こせい)「いもうと扈三娘(こさんじょう)をお返しいただければ、かわりに何でもさしあげます」
宋江「…王矮虎(おうわいこ)さえお返し下されば、妹御をお返しいたしましょう」
呉用「まあまあおまち下さい、これから祝家莊で一さわぎあるはずですが、お宅の方からぜったいに援兵を出されぬこと、そしてもしも祝家莊からお宅に逃げこんだものがあった場合には、ただちに捕縛せられたいこと、この二つを聞き入れて下されば妹御をお返しいたしましょう」
祝虎(しゅくこ)「宋江、いざ出合え!」
孫立「やあやあ、われと思わんものは、出で来たって勝負を決せよ!」
この勝負じつは八百長だったので、石秀(せきしゅう)の武芸はけっして孫立におとるものではなかった。
林冲(りんちゅう)、大音声に、
「梁山泊の好漢ここにあり!」
李応「どうか家にかえして下さい。家族のことが気がかりですから」
呉用が笑いだした。
「いや、そのご心配はご無用。ご家族はもうやがて山寨におつきになる時分です。お屋敷はすっかり焼きはらってしまいました」
李応は顔色をかえて驚いた。晁蓋(ちょうがい)と宋江は下座にさがって平伏し、
「われら兄弟、じつはひさしく貴殿の名声を聞き、ぜひとも仲間にはいっていただきたいと存じて、この苦肉の計、ひらにおゆるしねがいたい」
その翌日、宋江は王矮虎(おうわいこ)をよんで、
「わたしは清風寨にいた時、きみに奥さんをもらってやる約束をしたが、今までそれがはたせず、気にかかっていた。今日その約束をはたしたい」
父の宋隠居のもとにあずけていた一丈青扈三娘をつれてこさせ、
「王英は、武芸ではあんたにおよばぬが、わたしはかねて彼に細君(さいくん)を世話すると約束していたことではあり、今日はさいわい黄道吉日、どうだろう、王英と夫婦になってくれまいか」
ところが今しも祝宴のまっ最中、知らせがあった。
「ただいまふもとの朱貴頭領の酒屋にうん城県の都頭雷横という人が見えております」