◎一体化するアジアと日本の針路
/進藤榮一
中間層とは、自家用車を買うことができる層をいう。
九〇年代に中国の中間層人口は、千数百万人でしかなかったのに、いまや四億人を越えている。日本全人口の約三倍だ。
日中間の給与格差は徐々に縮まり、2000年代初頭には20対1、実勢購買力で今日5対1程度だ。あと10年も経てば給与格差は逆転するのではなかろうか。
2010年GDP(国内総生産)で中国は、日本を追い越し世界第二位の経済大国に躍り出て、13年にはインドが日本に追い付き、50年にはインドネシアが日本と横並びになると予測されている。
アジア諸国間の経済社会相互依存は深化し続ける。この流れは、もはや止めようがない。国家間の政治的な対立があろうがなかろうが、アジア経済一体化はさらに深化するだろう。その経済一体化の現実の上に立っていま、私たちはアジアでWin-Win(お互いに利益を得る)の関係を構築し、地域協力の制度化を進めていくべきである。
モンスーン気候帯の稲作アジア文化には、白黒をはっきりつけない曖昧性と多様性を受容する、不二帰一的な、文化のいわば共通の古層が、底流に流れている。異質な他者と多元性が共生できる文化の装置だ。
アジア全体が未来に向かって進もうとしているなか、嘆かわしい出来事が起きた。昨年12月26日、安部晋三総理の靖国神社参拝である。
靖国神社参拝の強行は、まさに一国主義を象徴する行為と言わざるをえない。…安部総理はアジアの経済発展と文化交流を台なしにしようとしている。
安部総理は自衛隊を「国防軍」に変え、「集団的自衛権」を認めて、「改憲」をするという。いったい、日本がどこの国と一緒になって、何のために戦争をするというのだろうか。…米国の核兵器の抑止力に守られながら、集団的自衛権を行使しようというのであろうか。