三八 九天玄女から天書を授かる
「じつはわたし、郷里(くに)にのこしている老父や弟のことを思うと心配で、いても立ってもいられない気持ちです。それで、うん城県まで行って迎えとって来たいのですが、おゆるしいただけましょうか?」
「にいさんが江州でおこした事件は、こちらでももう知れわたり、県庁かられいのふたりの都頭が毎日やって来て、見はっていますので、わたしたちは身動きできません。…はやく梁山泊の頭領たちにたのんで、わたしたちを救い出しに来てください」
「宋江、待てえ!」
(晁蓋(ちょうがい)のいうことをきかなかったばかりに、とんだことになった! 天よ!、何とぞ宋江にあわれみをたれたまえ!)
「宋星主、そなたに三巻の天書を授けますゆえ、そなたは天にかわって道を行ない、もっぱら忠義を旨として国のため人民のためにおつくしなさい。…」
公孫勝
「決して、お約束を裏切るようなことはいたしませぬ。師匠に会い、老母を安心させた上で、かならず帰ってまいります」
「三つとは? さあはやくいってくれ、あにき」
と李逵がいうと、宋江、
「一つ、途中でぜったいに酒を飲まぬこと。二つ、ひとりでこっそり行って母親をつれてくること。短気でけんかっぱやいお前といっしょに行こうというものはだれもいないからな。三つ、ニ梃斧(にちょうおの)は持って行かぬこと。道中用心して、早く行って早く帰ってくるんだぜ」