四三 一ぴきの虎のことから八人の好漢、梁山泊に投ずる
毛隠居「おいおい、何ということをいう? 虎が裏庭にいるなんて、屋敷の者が知っているわけはない。それをまたかついで行くなんて? お前たちもげんに見たはずだ。錠前をたたきこわしていっしょにはいって来たじゃないか」
楽和「包節級(ほうせつきゅう)は毛隠居から金をつかまされて、貴公たちを殺そうとしている。何とかしてやりたいがおれのひとりの力では、どうにもならない」
「にいさん、どうしてもいやだとおっしゃるの? よござんす。 それじゃわたし、今日はにいさんが相手だわ、わたしが死ぬか、にいさんが死ぬか!」
顧大嫂(こだいそう)はかくし持った二本の刀をすらりとぬいた。孫立はさげんだ。
「まて! はやまるな! まあ、とくと相談しようじゃないか」
おりから毛家は大旦那の誕生祝いで酒盛りの最中だった。好漢たちは喊声(かんせい)をあげてなだれこみ、たちまち毛隠居、毛仲義(もうちゅうぎ)以下一家の老若男女ことごとくきり殺した。……夜を日についで梁山泊へといそいだ。
孫立「われらおおぜい、手みやげも持たずにおしかけてまいりましたが、一つ祝家莊をやぶる計略をお目みえのしるしにしたい」