◎雌伏の虎
「家来というは気楽なものでな。生命も口も主人あずけだ。だが、大将となるとそうはいかぬぞ。武道兵法はむろんのこと、学問もせねばならぬし、礼儀もわきまえねば相ならぬ。よい家来を持とうと思うたら、わが食を減らしても家来にひもじい思いをさせてはならぬ」
◎狂い桜
本多の後家は哀れに思えた。愛してやってもよいと思う。鶴姫はちと腹立たしい。そしてやっぱり……亀姫の妄想が、いちばん強く竹千代をしめつける。
「よし!」といって竹千代は眼を開いた。
亀姫を氏真などに渡すものか。これも一つの戦いではないか……パッと夜具をはねのけたとき、……