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2020.11.14-4(3)

2020年11月13日 (金) 16:21
2020.11.14

【大機小機】コロナ対策とMMT理論
日本経済新聞 朝刊
2020/11/13 2:00

 MMT理論では国家の通貨発行に制限はないとの説明が行われたのに対して、それは中央銀行による公債の「自動的」な直接引き受けが認められるようなものと理解してよいのかとの質問がなされた。それへの答えは、MMT理論では、政府と中央銀行を一体のものと考えるので、そもそも公債の中央銀行引き受けという概念自体が存在しないということであった。

 なんともわかりにくい答えだが、要は中央銀行が関与しない通貨発行という意味で、戦争中の軍票発行と同じと考えれば分かりやすい。新型コロナウイルスとの戦いは一種の戦争である。とすれば、軍票の発行を正当化するのと同様の理論が必要になる。それがMMT理論というわけである。

 しかしながら、戦争が終わっても軍票を発行し続ける国はない。でなければ、インフレになって経済がおかしくなってしまうからだ。MMT理論でも、租税をインフレを抑制するために市場から過剰となった通貨を回収する手段として位置付けて、通貨回収の必要性を認めている。

 とはいえ、MMT理論は、その際に、租税を課す政治的意思が常にあるとは限らないとしている。それは、理論として極めて無責任なものだ。政治的意思がない場合には、インフレになって経済が破綻してしまうからである。

 そのようなことにならないために、中央銀行がその受け入れる金融資産見合いで通貨を発行し、政治的意思に左右されずに安定的な金融政策を行うというのが、歴史上確立されてきた知恵である。中央銀行の関与しない通貨発行をよしとするMMT理論は、その知恵を無視するものだ。新型コロナ下の状況、すなわち占領地における軍票の発行といった非常時にしか通用しない、平時には理論とも言えないようなものと心得ておくべきである。

(唯識)


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