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2020.11.14-4(4)

2020年11月13日 (金) 16:54
2020.11.14

【経済教室】大阪都構想が残した課題 
大都市制度改革、現状基本に
辻琢也・一橋大学教授
日本経済新聞 朝刊 経済教室(27ページ)
2020/11/13 2:00

 実現一歩手前まできた大阪都構想は、大都市自治のあり方を根幹から変革しようというものだっただけに、大阪市民・大阪府民のみならず、日本全国の関心を集めた。しかも現在に至るまで同構想に対する評価は鋭く対立している。否決されたことにより、実現をもってその主張の当否を実証することもできない。

 そこで本稿では、大阪都構想の個別論点を検証することは避け、端的に事実として総括できることを整理して、大都市制度改革の今後のあり方を展望したい。超高齢・人口減少社会での政策転換を主題に、次の3点を注視したい。


第1は地方主導の独自改革だったことだ。

しかし第2に今回の制度改革案も実現しなかった。

第3はそうした中で、賛成と反対の拮抗状況が継続していることだ。

いわば「現状に対する不満」と「将来に対する不安」が均衡している状況だ。

おそらく高齢化とともに意見が固定化しやすいと同時に、「不安ある将来」を避け「不満ある現状」を甘受する保守意識が強くなってきていると推測される。

しかしこれでも「大阪市がなくなる」「住民サービスが低下する」という批判を浴びて、多数を形成するには至らなかった。

すなわち制度を「『抜本的に』改革する」と最初に踏ん張るよりも、「なじみある現行制度を基本に、住民の利便性を高めながら、その簡素化・一元化・共同化などにより実務改革を着実に図っていく」制度改革を先行させる戦略のほうが、現実的であることがわかる。存続が決まった大阪市や特別自治市構想も、こうした改革の方向を向いている。

この際に鍵を握るのは、スマート化政策の推進だ。デジタル化やクラウド化の進展の中で、もっぱらアナログの世界で想定していた「二重行政の解消」や「成長戦略の再構築」は、別次元での行政展開が期待される。

今回の住民投票を通じて大阪をはじめとする関西圏は、関係者のみならず多くの住民が大都市をはじめとする自治制度問題に直面せざるを得なかった。この得がたい経験を共有財産に、大阪市や大阪府が中心となり、さらに国を巻き込み、行政手続き上の電子化・共同化・一元化などを先駆的に進め、世界の先進民主国の範となるデジタル時代の大都市制度を新たに構築することを強く期待したい。

<ポイント>
○複雑な大都市制度改革の意義の理解難題
○抜本改革より現状連続的な政策配慮必要
○高齢者にもやさしいデジタル化を進めよ

 つじ・たくや 62年生まれ。東京大教養学部卒、同大博士(学術)。専門は行政学、地方自治論

◎大阪都構想
この得がたい経験を共有財産に、世界の先進民主国の範となるデジタル時代の大都市制度を新たに構築することを強く期待したい。


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