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2020.11.13-4(5)

2020年11月12日 (木) 16:22
2020.11.13

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バイデン氏は初志を貫け
日本経済新聞 朝刊 オピニオン2(7ページ)
2020/11/12 2:00

 決戦の後も「2つの米国」は不変だ。米大統領選挙で当選を確実にしたバイデン前副大統領を英国やドイツ、フランスの首脳が電話で祝福した10日。トランプ大統領の腹心であるポンペオ国務長官は「政権2期目へ円滑に移行する」と素っ気なく話した。公正な選挙を世界に呼び掛ける「米国の顔」の信じられない言葉だった。



 現職が再選に失敗すれば1992年のブッシュ大統領(第41代)以来になる。屈辱を嫌い、民主主義の原則を自分に有利にねじ曲げる異端のリーダーには、やがて「史上最悪」の大統領という称号がつくかもしれない。


 
 騒乱をよそに、バイデン氏は冷静沈着なリーダー像を印象づけようとしている。米メディアがペンシルベニア州の制覇で「バイデン氏当確」を伝えた7日の夜。デラウェア州ウィルミントンでの勝利宣言は「大統領らしさ」を意識した言葉をちりばめていた。

 約15分の演説で注目したのは4つの理念だ。まず「Unity(結束)」。トランプ氏に投票した有権者に対しても、敵視をやめて結束するよう呼び掛けた。

 民主党の院内総務も務めたトム・ダシュル元上院議員は「党派対立はおそらく(南北戦争以来の)160年間で最も激しい。上院や連邦最高裁判所も理念対立が前面に出て、政府が深刻な機能不全を起こしている」と語る。20日に78歳となる老練のバイデン氏に「超党派の協力と礼節を取り戻すことができる」と期待を寄せる。

 第2に「Diversity(多様性)」。アジア系の黒人女性であるハリス上院議員を副大統領候補に据え、組閣でも男女や人種のバランスをこれまで以上に重視するとみられている。

 3つ目の要素は「Possibility(可能性)」。米経済のしなやかさと力強さ、変革力で夢を実現し、雇用を創出するという理念だ。トランプ政権が背を向けた地球温暖化対策を強化し、新たな投資や雇用を創り出そうとする構想はここにつながる。

 4つ目は米国という国のかたちにかかわる「Decency(品格)」。新型コロナウイルスの米国の感染者数は累計1千万人の大台に達し、直近では1日の新規感染が10万人と最高水準にある。科学の知見を生かした疫病の克服とともに、白人警官の黒人暴行死事件を機に高まる人種差別の根絶も政権の重要課題となる。



 「寝ぼけたジョー」とトランプ氏にからかわれたバイデン氏は、確かに地道ながらも不思議な突破力をもつ人物だ。

 新型コロナや人種問題を巡って蓄積した有権者の「トランプ疲れ」は、バイデン支持のうねりを呼んだ。最終盤に大統領専用機を乗り回し1日5回の演説をしたトランプ氏の追撃をはねのけた。

 外交舞台でもバイデン氏は硬軟織り交ぜた立ち回りをするという。副大統領時代の訪中に同行したダニエル・ラッセル元国務次官補は、バイデン氏が国家主席に就く前の習近平(シー・ジンピン)氏に「偶発で起きた戦争は、単なる戦争よりももっと悪い。米中は双方とも意図せざる危機や紛争の防止へ注意深くしなければならない」と話したのを記憶している。

 オバマ政権は中国との危機回避メカニズムの確立に腐心した。「バイデン氏はタフな交渉者だが、双方が納得できる妥協や合意を引き出すことの重要さも理解している」とラッセル氏は語る。


 
 トランプ氏と対照的な「まともさ」で勝負したバイデン氏。温暖化を危惧する若者層、大統領の品格を憂える人々、そして傷ついた国際協調の復活を期待する世界の支持がじわじわと集まっている。

 「きれいごとにすぎない」「実際の政策に落とし込めるのか」といった疑問や批判は当然あろう。下院の過半数を維持した民主党だが、来年1月のジョージア州決選投票で上院の過半数奪還を逃せば「ねじれ議会」となり、政策や体制の刷新は遅れる。

 トランプ氏の乱世でぽっかり開いた穴を埋めるのは容易ではない。それでもバイデン氏は初志を貫くべきだ。任期4年で完遂できなくても、分断の修復は次の世代に着実に引き継ぐ必要がある。「まともな米国」は真の意味で世界の支柱となる。我々はトランプ時代に、それを痛いほど学んだ。


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