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2020.11.13-6(2)

2020年11月12日 (木) 11:49
2020.11.13

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〈危機の時代を生きる〉
感染症は環境問題。
思いやりの精神が持続可能な未来をつくる 
環境ジャーナリスト・石弘之さん

 ウイルスは、約1万分の1ミリと非常に微小で、大気中や深海など地球上のあらゆる場所に存在しています。遺伝子を保有するものの、生物の最小単位である細胞を持たないことなどから、生物と無生物の境界線上に位置付けられています。
  
 ウイルスの歴史は古く、今から30億年前には誕生していたとされます。一方、コロナウイルスが登場したのは今から約1万年前と推定されていますが、最近、6万年前の化石人類であるネアンデルタール人のDNAからも、コロナウイルスに感染した痕跡が見つかっています。


 
 人間の体内には、約380兆ものウイルスが存在しています。人間が生きる上で欠かせない働きをするものも、生物の進化に大きく関わってきたものもいます。
  
 本来なら遺伝子は、親から子、子から孫へと“垂直方向”に伝わりますが、ウイルスは、ある生物から他の生物へ、種の壁を越えて、“水平方向”に遺伝子を運ぶ役割を担っています。それが、それぞれの生物種の遺伝子に組み込まれることで、進化を促す一因になるのです。人間の遺伝子の約4割は、ウイルスによって運び込まれたとする説もあります。
  
 例えば、一部の哺乳類が保有する「胎盤」は、ウイルス由来の遺伝子による進化で獲得したものです。胎児は、父親の遺伝子を半分引き継いでいるため、母親の免疫システムにとっては排除の対象となりますが、母親の体内にいるウイルスが膜を形成し、胎児を包み込むことで攻撃から守っているのです。


●著書『感染症の世界史』(角川ソフィア文庫)

 ――著書『感染症の世界史』の「あとがき」で、「人は病気の流行を招きよせるような環境をつくってきた」とつづられています。今回の新型コロナウイルスの世界的流行を、どのように見ていますか。
  
  
 新型コロナウイルスは、“世渡り上手”なウイルスだと思います。感染しても無症状の場合が多い上、人間の体内に抗体がつくられにくい特性を持つなど、人類の感染予防対策の網目をすり抜けるからです。
  
 ウイルスは自らの意志ではなく、人によって広がります。私たち人類の方から、ウイルスが蔓延しやすい状況をつくり出してきたということです。
  
 具体的な要因としてはまず、世界各地で進行する「都市化」が挙げられます。特に、ここ100年間の都市化のスピードは著しい。20世紀初めには全体の2割程度だった都市人口が、今では約5割にまで上っています。
  

 今回の新型コロナウイルスの自然宿主(もともとウイルスと共生している生物)とされるコウモリも、本来のすみかを追われ、人や家畜との接触機会が増えました。そのため、彼らの保有するウイルスが、センザンコウやジャコウネコなどの中間宿主を経て、最終宿主である人間に感染したと考えられます。



 なぜ終息を見極めるのが困難かといえば、人類と感染症との戦いは、“いたちごっこ”のようなものだからです。いくらワクチンを開発しても、しばらくすれば、耐性を持った新種が生まれ、流行を繰り返します。新型コロナウイルスのワクチン開発も進んでいるようですが、医学的に完全に抑え込むことは難しいでしょう。
  
 それよりも、コロナに対する人々の捉え方が、社会的・心理的に徐々に変化していくのが、一つの収束のあり方だと思います。「ウィズ・コロナ」という言葉があるように、何度か感染流行を繰り返す中で、インフルエンザのように、コロナウイルスとの共存が当たり前の考え方となって定着していくのではないでしょうか。
  
 歴史を振り返ると、各世紀を代表するような感染症が猛威を振るいました。14世紀のペスト、16世紀の梅毒、17〜18世紀の天然痘、19世紀のコレラと結核、20世紀のインフルエンザなどです。
  
 21世紀に入ってからは、03年のSARS、12年のMERS(中東呼吸器症候群)、そして今回と、コロナウイルスの感染流行が相次いでいます。これからもコロナウイルスの感染流行は、断続的に発生するかもしれません。



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