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【Deep Insight】新南北戦争は絵空事か
日本経済新聞 朝刊
2020/10/17
特に僅差でトランプ氏が負ければ、彼を支持する極右勢力などが怒り、全米各地で暴力デモが燃え広がりかねない。
ざっくり言えば、1861〜65年の米南北戦争もどこまで奴隷制が認められるかという、憲法闘争が過熱したことが主因だった。長い目でみると、米国が将来、第2次南北戦争のような事態に進んでしまう恐れはないだろうか。
米内政に詳しい会田弘継・関西大学客員教授は、現状が南北戦争の前夜に似てきているとみる。「南北戦争は奴隷制や関税をめぐる連邦政府と州の権限について、憲法上の対立が高じて起きた。いまの政治分断と憲法危機は、それに重なる深刻さがある。すでに各地で武力衝突が広がっている」
外国による介入も深刻だ。米政府はロシアが選挙に影響を及ぼすだけでなく、米国内の暴力もあおろうとしていると警戒する。
米外交調査会社、PTBグローバル・アドバイザーズ社のゴールドスタイン社長兼最高経営責任者(CEO)は「米社会を混乱させようと、ロシアは何十年も前から米極右グループとつながりを築いてきた」と語る。同社の分析によると、黒人殺害や傷害事件をきっかけにミズーリ州(14年)、ウィスコンシン州(20年)で起きた暴動では、ロシア工作員が関与した形跡があるという。
むろんトランプ氏かバイデン氏が圧勝すれば、最悪の危機は避けられるかもしれない。だが、米社会の分断を深めたすさまじい貧富の格差や、人種対立が消えるわけでは全くない。それが米国の対外政策にどう影響するか、世界は注視するときだ。