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春秋
日本経済新聞 朝刊
2020/10/4 2:00
米誌「サイエンティフィック・アメリカン」は、創刊175年、世界で最も古い一般向け科学誌である。かの発明王エジソンが1877年に、できたばかりの蓄音機に自らの声を録音、最初にお披露目したのが同誌編集部だった(山川正光著「オーディオの一世紀」)。
▼「不偏不党」を貫き科学史を刻む偉業を静かに見守ってきた。が、トランプ大統領の振る舞いに我慢の限界がきたのだろう。今年10月号で米大統領選において初めて支持表明、バイデン候補を推すという。新型コロナで米国が世界最多の死者を出したのは証拠と科学を拒んだトランプ氏のせいだ、と「ノー」を突きつけた。
▼科学とはデータと論理的な考え方で事実を追究する営みだ。この大統領が自らコロナに感染したからといって、主張を変えることはなかろう。先日もカリフォルニア州を襲った山火事について、気候変動の影響を真っ向から否定。森林管理の問題をやり玉に挙げ、ついには「これから涼しくなっていく」とうそぶいていた。
▼さて、あすからノーベル賞の発表が始まる。第2次大戦後、生理学・医学、物理、化学の自然科学系3賞で受賞者のおよそ半数が米国人である。科学や技術の力が米国を超大国へと導いた。「強いアメリカ」を目指すなら、なぜ科学をないがしろにするのか。トランプ氏の大いなる矛盾に有権者はどんな判断をくだすのか。