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2020.10.4-4(6)

2020年10月03日 (土) 21:58
2020.10.4-

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世界の安定役 問われる覚悟
日本経済新聞 朝刊 東西ドイツ統一30年特集(6ページ)
2020/10/3 2:00

 東西統一はドイツ、欧州、そして世界になにをもたらしたのか。

 30年前、西ドイツ代表として再統一条約に署名したショイブレ連邦議会議長は、ドイツの「心構え」を取材に語ったことがある。「予想もしなかった統一が突然、可能になった。これからは欧州統合の背中を押したい」

 メルケル独首相は9月、国連創設75年に寄せたメッセージで踏み込んだ。「グローバルな問題は国際協調でしか解決できない。ドイツは責任を担う覚悟がある」

 ナチスへの反省から国際舞台での発言を控える「沈黙の巨人」から「モノ言う大国」に脱皮したドイツ。再統一がもたらした2つの変化が「欧州の盟主」に押し上げた。

◇◇

 ドイツが精神的に「戦後」を終えたことが2つ目の変化。国家分断を終わらせた達成感だけではない。ナチスと共産独裁という第2次世界大戦にからむ「2つの負の歴史」に向き合う姿勢が官民ともに強まった。

 ドイツ銀行、化学大手BASF、服飾のヒューゴ・ボス――。ドイツ企業が欧州統合に乗って域内を席巻するには、過去に手を染めた強制労働などを告白し、イメージを改善する必要があった。不都合な過去をさらけ出した結果、国際的に「みそぎ」を済ませたという評が定着し、ドイツがモノを言える環境が整った。

 いまの欧州を象徴するのが、巨額のコロナ対策を巡って討議が5日に及んだ7月の欧州連合(EU)首脳会議だ。

 まず存在感を示したのが財政規律を重んじる北欧。カネを出し渋り、補助金の規模を削らせた。

 東欧も譲らなかった。EUはポーランドなどの強権政治をけん制するため、法治国家であることを資金支援の条件にしようとしたが猛反発。EU案は骨抜きになった。

◇◇

 戦勝国の英国が抜け、敗戦国ドイツがEUを仕切る。軸は西から東に移り、戦後秩序は崩れた。

 域外に目を転じれば、ドイツ率いるEUは自力で中国やロシアに対抗せざるを得ない。もはや米国は当てにならず、世界秩序の柱だった「大西洋同盟」も形骸化した。

 「世界のなかの安定役」。その覚悟が問われるが準備はできているはずだ。もともと欧州統合は米ロと対等に渡り合うための枠組みで、通貨ユーロは基軸通貨ドルに並ぶ野心を秘めた試みだ。

 ドイツも米国依存を修正済みだ。「東方外交」で冷戦期に共産圏融和を探り、73年にソ連からガスを輸入。経済面では内需拡大を求める米国を何度も無視した。足元の米中対立で慌てて自立に走るわけではない。

 ドイツは2度、世界の秩序作りを試み、大失敗した前科がある。ドイツ帝国の膨張策は第1次世界大戦の導火線になり、ヒトラーの東欧侵略は第2次大戦を招いた。

 三度目の正直はあるか。強い経済に盤石の財政、それに安定政権。「モデル国家」だとドイツは自信を持つが、ともすれば傲慢になりがちな国民性は危うい。「周りがおびえないように気をつけないと」。30年前、東ドイツ政府を率いた穏健派のモドロウ元閣僚評議会議長(首相)は取材にかみ締めるように語った。

 望ましいのは強大なドイツの監視役としての強いフランス・イタリア。域内の歯車がかみあってこそ各地ではびこるポピュリズム(大衆迎合主義)や強権政治を抑え込む力を持ち、世界の安定役になりうる。

 日本はどう向き合うべきか。戦後の英国偏重は、もう見直すべきだろう。そうでないと30年前に始まった欧州の激変に取り残される。

(欧州総局編集委員 赤川省吾)


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