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2020.9.22-4

2020年09月21日 (月) 23:17
2020.9.22-

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【FINANCIAL TIMES】在宅就労 もう一つの現実
エンプロイメント・コラムニスト サラ・オコナー
日本経済新聞 朝刊
2020/9/21 2:00

 1906年5月のロンドンでは小銭があれば、その時注目を集めた展示会に入場できた。会場に「展示」されていたのは内職にいそしむやつれた人々だ。それぞれの傍らには労働時間、賃金、経歴を説明する掲示板が置かれていた。

 展示会の目的は劣悪な条件で働く低賃金労働者の窮状を社会に知らしめることだった。

 今日では在宅ワークと聞いても貧困や絶望を連想することはない。むしろ新型コロナウイルスの感染拡大で示された通り、ほぼ高所得者だけの特権だ。欧州での調査では、テレワークが可能な人は所得上位20%には4分の3いるが、下位20%では3%にとどまる。

◇◇

 だが専門性の高い仕事でなくても在宅でお金を稼ぐ方法がある。クラウドワークと呼ばれるもので、コロナ禍で求職者が殺到している。呼び名は21世紀風だが、一皮むけばかつての展示会場の風景によくなじみそうだ。

 クラウドワークでは企業がオンライン上の作業を細分化し、世界各地の在宅ワーカーに発注する。「ウーバー」の運転手などネットを通じて単発の仕事を請け負うギグワーカー同様、こちらも独立事業主と見なされ、出来高払いだ。

 米国の旧炭鉱町に住むジェイニーさんはパートナーが3人の子どもを残して死亡した後、クラウドワークをするようになった。米大学の聞き取りに「1日に12〜16時間働けば、時給で5ドル(約520円)ほど稼げる」と話した。

 彼女が使っているサイト「アマゾン・メカニカル・ターク(AMT)」には最低賃金の明示がなく、1件1〜2セントの仕事の依頼が多い。成果物が突き返されれば報酬はない。業務依頼で多いのは人工知能(AI)の機械学習を手伝うデータ整理だ。研究者のアンケート調査への協力もある。

 2017年の調査によると、AMTでは2676人の労働者が380万件の業務をこなしていた。時給の中央値は2ドル。米の連邦最低賃金7.25ドルより多く稼ぐ人はわずか4%だった。

 なぜそんな条件で働くのか。20世紀初めに内職に精を出した人々と理由は同じだ。隙間時間に小遣いを稼ぎたい、地域に働き口がない、障害がある、子どもがいて働きに出たくないなど様々だ。

◇◇

 歴史学者ヘレン・マッカーシー氏が著書「ダブル・ライブズ(二重生活=邦訳未刊)」で詳述したように、20世紀初頭の英国で社会改革を目指した人々の一部は「(女性が)もっと家事に時間を割けるよう」内職仕事は工場に集約すべきだと考えた。今の時代、弱者を保護してやるという態度は間違っている。在宅就労の希望や必要があるから人々はクラウドワークを選ぶのだ。

 とはいえ実態が不透明で、搾取の構図が当てはまるこの働き方を放置すべきではない。規制や個人事業主の組合化のほか、米国などでは一定の生活水準を支える社会保障の拡充が必要だ。

 在宅就労が先進的な働き方だと思う人は多い。しかし気をつけなければ、せっかく先人たちが暮らし向きの改善に取り組んできたのに、いつか来た道に戻ってしまうことになりかねない。

☆株式会社クラウドワークス (CrowdWorks, Inc.) は、同名の総合型クラウドソーシングサイトをはじめとするサービスを運営している企業。オンライン上で、在宅ワーカーと仕事発注者のマッチング、業務の遂行、報酬の支払いまでを一括で行うサービス等を提供している。

◎「在宅就労 もう一つの現実」
欧州ではテレワークが可能な人は所得上位20%には4分の3いるが、下位20%では3%にとどまる。
米の連邦最低賃金7.25ドルより多く稼ぐ人はわずか4%だった。
実態が不透明で、搾取の構図が当てはまるこの働き方を放置すべきではない。(日本経済新聞 朝刊)


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