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2020.9.20-4

2020年09月19日 (土) 16:31
2020.9.20-

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【Deep Insight】DXは社長のためにある
日本経済新聞 朝刊
2020/9/19 2:00

 「1兆ドルコーチ」という本にアップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏やグーグル持ち株会社アルファベットのエリック・シュミット元会長らが、「コーチ」と呼ばれた人物にいかに依存していたかが描かれている。
 興味深いのは依存したのは戦略面とともに、主にメンタルな部分だったということ。そしてコーチという職業が1980年代から米国に存在し、ほぼ全ての社長や最高経営責任者(CEO)が自分に合うプロフェッショナルと契約して意思決定に関する日々の悩みを相談している。そんな事実がわかることだ。

 実は、日本にもコーチ(正式名はエグゼクティブコーチ)はおり、利用する経営者は上場企業や外資系日本法人のトップなど1千人を超えるという。

 日本人コーチの草分けで、米国際コーチ連盟という機関の資格も持つ粟津恭一郎氏(ソニー出身)に話を聞いてみると、自身の最大の仕事は「とにかく質問をし続けること」と「経営者をDX(デジタルトランスフォーメーション)に導くこと」だそうだ。

◇◇

 一つ目の役割は米国と同様で、経営者の迷いをできるだけ和らげることだ。専門知識や経験ではクライアントに及ばないが、自分がしている日々の「自問自答」に見落としがないかどうかを経営者の多くは絶えず気にかけ、「第三者の目」を求めているという。

 粟津氏はそこに経営者が自分ではしないであろう質問を思いつくだけ浴びせ、気づきや確信を得ていってもらう。例えば、「あなたは世界で何番目に優れた経営者だと思うか?」といった意表を突く質問もしばしば織り込む。面談は1人あたり月2回。時間も胆力もいる仕事らしい。

 もう一つのDXはコロナウイルスの感染拡大が影響する。多くの企業が在宅勤務に移行する中、「社長もリモート」というケースが増えている。だが、「ズーム」などリモート会議システムのやり方がわからなければ、人脈の維持・開拓が困難なばかりか、社内の仕事もままならない。

 案の定、初対面の経営者にはズームの設定を秘書任せにしたり、電子メールしか使えなかったりする人が多い。社内がデジタル化する一方で、置き去りにされているのが社長だという懸念がある。

 「経営者という仕事は今、大きな分岐点に立たされている可能性がある」と粟津氏は見る。

 例えば、コロナ禍の前は「求心力」「集中」といった経営上の要素は比較的容易に手に入れられた。昨今は在宅勤務の広がりや移動制限によって「遠心力」と「分散」の中で組織のパフォーマンスを上げていかないといけない。

◇◇

 乗り切るには発想の転換が必要かもしれない。やはり社長DXに詳しいコンサルティング会社、デロイトトーマツグループの松江英夫執行役は「リバースメンタリング」という手法に注目する。

 製造業にはライバル企業の製品を分解し、どんな作り方をしたかを知るリバースエンジニアリングという手法があるが、似た発想だ。IT(情報技術)は若い世代が詳しい。それなら経営者は目線を若い社員に合わせ、謙虚に「コーチ」になってもらえばいい。

 すでに化粧品大手などが導入しているが、その効果としては経営者のITリテラシーが高まる、若い世代の考え方を知ることができる、IT投資への理解が深まり経営の速度が上がる――などが指摘されている。

 現実と仮想空間、集中と分散、求心力と遠心力、経済価値と社会価値。コロナ禍で両極化の傾向が強まり、どちらも満たさないと生き残りに関わるのだとすれば、経営者と若手という両極のコラボレーションはアフターコロナ時代の一つの答えかもしれない。

◇◇

 組織にそんな化学反応をもたらすDXにはもう一つ、経営者の時間軸を変えるという効果もあるのではないか。各種調査によれば、日本企業の6割以上は今も「中期経営計画」を3〜5年ごとに策定しているが、内容が未達で終わることが多く、企業がそれらを発表しても最近は株式市場が無反応ということが増えた。

 不確実性が増す今後は3年、5年先を予想することが困難になり、計画を作ること自体が意味を失う可能性がある。代わりに重要になるのは10〜20年程度の長期ビジョンや企業としてのパーパス(存在意義)を見いだし、それを半年、1年ごとに細分化して実行に移すやり方だろう。

 1兆ドルコーチには「ビジョンは計算を超える」というアップルの話があるが、シリコンバレーに限らず、米上場企業には3〜5年の経営計画を発表する習慣がない。あるのはやはり10年程度のビジョンだ。

 かつて長期雇用で知られた日本企業は経営が意外に短期主義だという見方も多い。遠心力の時代は従来型の組織カルチャーの危機という見方もできる一方で、予定調和的で「社長の在任期間」というだけの視点しかなかった「中計文化」からの脱皮には良いきっかけになる。

☆リバースメンタリング
「リバースメンタリング」とは、逆メンター制度ともいわれ、上司や先輩社員がメンター=相談役になって若手をサポートする通常のメンタリングに対し、部下が上司に助言する逆方向(リバース)の支援活動のしくみを指します。チームリーダーや管理職などの中堅・ベテラン社員が、若い世代の気持ちを理解して適切かつ柔軟な対応がとれるよう、直属の部下ではない若手社員をメンターに起用することで上司としての成長を促します。

☆ 【reverse engineering】
リバースエンジニアリングとは、出荷された製品を入手して分解や解析などを行い、その動作原理や製造方法、設計や構造、仕様の詳細、構成要素などを明らかにすること。

☆「予定調和」の意味
「予定調和」の意味は「(日本社会で)小説・映画・演劇・経済・政治などと幅広い範囲で、観衆・民衆・関係者等の予想する流れに沿って事態が動き、結果も予想通りであること」です。

あらかじめ誰の目にも結果が明らかで、実際に予想通りの結果になることを「予定調和」と言います。

 「予定」は「行動や行事などをあらかじめ定めること。前もって見込みをつけること。また、その見込みや定められたこと」を表します。

 「調和」は「上手く釣り合い、全体がととのっていること。いくつかのものが矛盾なく互いに程よいこと」を表します。


 例えば、「日常は、ドラマや映画のように予定調和の世界ではない」といった場合は「日常は、ドラマや映画のように予測通りの結果にはならない」という意味になります。


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