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2020.9.6-4(4)

2020年09月05日 (土) 21:53
2020.9.6-4

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【Asiaを読む】「途上国」の中国、世界に責任を
香港中文大経営大学院教授 デビッド・オールストロム氏
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(8ページ)
2020/9/5 2:00

 約40年にもわたって安定した高度成長を遂げてきた中国が、もはや貧しい国でないことは明らかだ。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により、多くの先進国の経済が減速する中、中国の4〜6月期の国内総生産(GDP)は前年同期比3.2%増に転じた。中国国家統計局は今年に入り、国民1人当たりのGDPが1万ドル(約105万円)を突破したことを発表した。
 中国の持続的な経済成長は、自国の発展を勢いづけたい他国から注目を集めている。一方、米国などは、中国はもはや「発展途上国」ではないと主張するようになった。例えば中国は、世界貿易機関(WTO)で途上国と申告し、優遇措置を受けているからだ。

 中国は先進国になる利益はほとんどないと考えているようで、(途上国の定義はなく、自己申告制ということもあり)貿易などでは途上国とみなされるべきだとする。実際、中国は制度の安定性などの尺度では、先進国に及ばない面があるだろう。とはいえ中国が直面する課題をみると、ミャンマーやラオスのような国々とは異なり、マレーシアやトルコのような「中所得国」に似ているといえる。

 中所得国は、低賃金や低コストの生産に頼って経済発展を続けることができなくなり、付加価値の高い製品などを開発する必要に迫られる。問題を解決できなければ、先進国入りを前に成長が鈍る「中所得国のわな」にはまってしまう可能性がある。

 世界銀行の1人当たり国民総所得(GNI)に応じた分類によると、中国は「上位中所得国」という位置づけになる。中国の成長で印象的なのは、規模の大きさではない。例外的に、約40年にわたって安定しており、つまずきがほとんどなかった点だ。

 より付加価値の高い製品を開発できない中所得国は、高所得国に移行するのが難しい。中国は問題に直面するが、(アジアで先行した)日本と韓国などが独自の技術とブランドを育成したケース、おおむね失敗した他国の経験からも学ぶことができるはずだ。

 米通商代表部(USTR)が2月、貿易の面で中国を先進国とみなすことになったというのは拙速だったかもしれない。とはいえ国際機関は、途上国の定義などを巡るルールを見直すべきだろう。中国も、先進国として認められることにも利益があることを認識すべきだ。

 中国は新型コロナの感染拡大に対し、新たな病院の建設などにより、国内については封じ込めた。中国が指導力を発揮し、他国への影響を強化するチャンスなのは事実だ。先進国になる中国が責任ある指導力を発揮することは、アジアの安定と世界の貧困との戦いに不可欠といえるだろう。

 関連英文はNikkei Asian Reviewサイト(https://asia.nikkei.com)に

 David Ahlstrom 米ニューヨーク大博士(経営学・国際ビジネス)。現在は香港中文大経営大学院の幹部も務める。専門はアジアの経営学、戦略的リーダーシップ論など。

●二面性にどう向き合う
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(8ページ)
2020/9/5 2:00

 中国では北京、上海、深圳など沿海部都市の1人当たりGNIが2万〜3万ドルとなり、高所得国の水準にある。沿海部から飛び出した中国企業は世界を席巻しており、中国に先進国としての責務を求めるべきだろう。だが全国平均こそ1万ドルを超えたが、内陸部のほとんどの地域が1万ドル以下の所得水準にあり、人口では圧倒的多数を占める。

 税金などを除く可処分所得の中央値は1〜3月で1人当たり7109元(約千ドル)だった。人口14億人の半分が年換算4千ドル以下にとどまる。中国の社会構造は既得権層に富が集中し、大多数の所得が低いままの発展途上国型だ。真の意味での中間層の力は弱く、これでは民主化も進まない。先進国と途上国の二面性を持つ中国にどう向き合うか。難しい問題だ。

(編集委員 村山宏)

☆GNIとはGross National Incomeの略で、国民総所得のことです。過去には、国民総所得のことを「GNP」と呼んでいましたが、近年、GNIに変更されました。GDP(国内総生産)と同様、経済の成長を計る指標ですが、GDPが「国内で1年間に生産されたモノやサービスの付加価値」であるのに対し、GNIは「居住者が国内外から1年間に得た所得の合計」を表します。




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