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春秋
日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)
2020/9/5 2:00
▼うつろう世相や経済の転変の中、家路に、あるいは盛り場に赴く身を委ねてきた頼もしき鉄路も、コロナ禍で転機を迎えたようである。JR東日本が、来春のダイヤ改正で、東京駅から半径100キロ圏内の終電の時刻を30分程度、早めるという。山手線は区間により、深夜0時台の客が以前より7割近く減っているらしい。
▼始発も遅らせて、電車の走らない時間帯を長くすることで、保線や駅の改良を円滑に進めたい狙いもあると聞く。「テレワークやEコマースの浸透で、感染の収束後もお客さまの働き方や行動様式は元に戻ることはない」。発表文のこんな趣旨の一節に、未知の感染症が巨大な鉄道会社に与えた衝撃がうかがえる気がした。
▼JR西日本も先月、同じような策を示している。さまざまな分野での時短や労働環境の変化は、ウイルスの生存戦略に強いられた面があるのかもしれない。70年代の「ホームにて」、80年代の「シンデレラ・エクスプレス」など最終列車の哀愁は名曲の素材となった。コロナと共生する新常態は、どんな歌を残すだろうか。