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土曜特集(公明)
コロナ禍で台頭、ワクチン・ナショナリズム
NPO法人日本リザルツ 白須紀子代表に聞く
2020/09/05 4面
――大国のワクチン開発の現状は。
白須 他国に先んじようと多くの国で、ワクチンの治験が最終段階まで進んでいる【表参照】。
中でも、ロシアは8月11日、国内で開発したワクチンの認可を発表した。“世界初”のワクチンとなるが、治験の最終段階を経たのかは不透明だ。効果や安全性には疑問符が付く。国家の威信や体面を重んじるあまり、安全性を無視する前のめりの開発姿勢が危ぶまれる。
米国は、ワクチン開発・供給を迅速に進める「ワープ・スピード作戦」に約100億ドルの巨費を投じている。しかし、確保できたワクチンを自国優先で使用する態度を隠さない。しかも、世界保健機関(WHO)への最大の資金拠出国でありながら、WHOからの脱退を表明した。国際協調が求められる時に大きな痛手だ。
中国は、官民一体でワクチン開発を猛烈な勢いで進めている。実用化されれば、東南アジアやアフリカなどへ優先供給する姿勢を示すが、低所得国に影響力を広げようとする“ワクチン外交”の狙いも透ける。
米中ロの大国の政治的な思惑にワクチンが利用されることがあってはならない。自国でワクチンが確保できても、他国で流行が続く限り、コロナ禍の危機は去らない。WHOのテドロス事務局長が「全員が安全になるまでは誰も安全にならない」と、ワクチン・ナショナリズムに警鐘を鳴らしているのは、そのためだ。
――今月1日、厚生労働省は、日本も国際枠組みに参加する意向を表明した。
白須 一歩前進だ。日本政府は、ぜひ正式参加を決断してほしい。日本がこの国際枠組みに入ることは、低所得国への国際貢献になるだけでなく、わが国のワクチン確保の選択肢を広げることにもなる。日本が参加すれば、国際連携の中核として大きな期待を集めるはずだ。
――公明党は国際枠組み参加を推進している。
白須 公明党は、山口那津男代表自ら、政府に参加を促す発言をするなど、政府・与党を突き動かす原動力になっている。全ての人は尊厳を持って生きる権利がある。まさに「人間の安全保障」を重視する政党ならではの姿勢だと評価したい。
しらす・のりこ 1948年生まれ。91年12月に「骨髄移植推進財団(現・日本骨髄バンク)」のボランティアに参加し、骨髄バンクの啓発活動などに尽力。2006年から日本リザルツでボランティアを開始し、07年にエグゼクティブ・ディレクター(代表)に就任。世界の貧困や飢餓、結核感染問題などの解決に取り組んでいる。