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2020.8.30-4

2020年08月29日 (土) 21:32
2020.8.30-

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【Deep Insight】角栄メモは今も問う
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(8ページ)
2020/8/29 2:00

 安倍晋三首相が辞任を表明した。それでも日本をアジアの金融センターにする構想は残すべきだし、先行する香港の政情不安でチャンスも訪れている。日本は過去2回も失敗しており、今こそ教訓が生きる。

 最初の挑戦は1980年代末。日経平均株価が3万8915円の最高値へと向かったころだ。

 世界の金融機関は、うなされたように東京に押し寄せた。米大手証券のトレーダーを経て作家になったマイケル・ルイスの「マネー・カルチャー」によれば、ホテルオークラのロビーにいるだけで、ニューヨークにいるより多くのウォール街幹部を見かけたという。

 各社は日本企業の成長に目を付けた。調査陣をそろえて日本株を世界の投資家に売り込み、投資銀行家は外国企業買収の筋書きを描いた。日本での荒稼ぎで本国のトップに上り詰めた人もいる。

 バブルは崩壊した。企業は価値を高めて株高を正当化できなくなったばかりか、価値を逆に失った。株高に乗じて巨額のエクイティファイナンス(新株発行を伴う資金調達)を実施、調達資金を設備や研究開発でなく土地や株への投機に使って大損したためだ。

 「企業価値こそ」が第1の教訓だ。香港が東京を蹴落としてのし上がれたのは、中国企業の成長を、投資家が透明な法律の下で享受できる唯一の場所だったからだ。

◇◇

 次の挑戦は90年代末。金融センターを目指す「金融ビッグバン」を政府が打ち出すと、久々に世界の金融機関が殺到した。米大手証券のメリルリンチは破綻した山一証券が全国に持っていた個人向け営業網を引き継いだ。モルガン・スタンレーも個人向け証券を始め、ネット証券の名門チャールズ・シュワブもやって来た。

 当時で1200兆円に及んだ個人金融資産を、預金から株などの投資に動かすのがビッグバンの目玉だった。世界は「宝の山」を目指し、数年で去った。

◇◇

 「投資文化こそ」が第2の教訓だ。証券会社の使命は売ることではなく、個人が豊かになる投資の文化を作ることだ。文化がなければ売るのがうまくても、マイナス金利でもマネーは投資に向かわない。26日には米投資信託の老舗、バンガード・グループの撤退が表面化した。個人マネーが思ったほど集まらなかったからだ。

 企業と投資家。株式市場の「ダブル主役」が光ることこそが金融センターの条件であることを、日本は2度の失敗で学んだ。

◇◇

 日本が金融センターを目指した原点は1974年と見る。田中角栄首相は東京証券取引所の理事長に就いた谷村裕氏にメモを渡し、株式市場の抜本改革を求めた。経済規模で世界2位にのしあがり米国との貿易摩擦が本格化、世界の頂点がちらついた時代だ。

 メモの5項目は骨太で、今にも通じる。まず株主への配慮。企業経営者は「利払い義務がないエクイティファイナンスは低コスト」という株主軽視を改め、余った資金は株主に返すべきだと迫った。

 日本の主要企業が株主のためにどれだけ稼いだかを示す自己資本利益率(ROE)は昨年8%。米国(14%)、欧州(11%)、日本を除くアジア(9%)に見劣りする。投資家のために企業価値を高める姿勢の弱さは、今も海外投資家が日本株を避ける原因だ。

 市場の企業改革圧力を強める「株の持ち合いの解消」と、企業に代わる「個人株主作り」は併せて検討すべき課題だ。企業は2000年以降、日本株の20%強を持ち続けている。個人に至っては12年の20%から17%に低下した。

 「市場区分の見直し」は、企業規模に応じた区分けで投資家が銘柄を選びやすくし、企業の資本増強も助ける。似た発想の市場再編は、2年後の実施にメドがついたばかりだ。「投機でなく資本調達の場」は、コロナでの業績悪化で資本を毀損した企業が価値を再び高めるために、これから試す。

 持ち合い解消と資本調達は企業価値、個人株主作りは投資文化、株主への配慮や市場区分の見直しは両方。5つの狙いはその後の挫折で思い知る弱点の克服にも役立つはずだった。46年後の今も道半ばの改革に、田中氏は墓の中でうなり声をあげるだろう。

 企業は価値を高めて株高にする。投資の文化が花開き、家計が老後のために資金を内外の資産に振り向ける。こんな道筋が見えれば、世界の金融機関は再び日本に来る。優遇税制や快適な住環境づくりばかりが話題だが、「稼げる市場なのか」という肝心の問いを忘れていないか。

 ニューヨークもロンドンも香港も、世界に誇る市場を持つからマネーや人材を引き付けて金融センターになった。次の政治リーダーに必要なのは3度目、そして最後の失敗を避ける王道の構想だ。


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