【FINANCIAL TIMES】
バイデン氏の愛車と決意
エネルギー・エディター デビッド・シェパード
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(6ページ)
2020/8/24 2:00
米民主党の大統領候補のバイデン氏は、歴代で最も環境に優しい大統領になりたいと考えている。それでいてアメリカ車の典型のような高排気量の1967年式「シボレー・コルベット・スティングレー」もこよなく愛している。
この2つは相矛盾するように思える。バイデン政権の誕生による石油市場への影響を探ろうとしている業界関係者は、同氏がSNS(交流サイト)で流しているコルベットの動画から微妙な真意をくみ取った方がいい。
最初の結婚時に父親が贈った深緑色のこの車は実に美しい。自動車メーカーが燃費を大して気にかける必要がなかった時代の産物でもある。バイデン氏がこのコルベットを紹介したのは環境政策の公約を反自動車キャンペーンではなく、業界活性化の機会として打ち出したかったからだろう。
動画の中で同氏は「(自動車は)米国を象徴する産業だ。電気自動車(EV)へ移行すれば、21世紀も市場は我々のものになると信じている」と語っている。
環境重視のメッセージを国内自動車産業華やかなりし時代やクラシックカーへの郷愁にくるんだもので、トランプ大統領が4年前の大統領選挙で訴えた「米国を再び偉大に」のバイデン版といえる。
これは重く受け止めるべきだ。最新の世論調査では11月の選挙でバイデン氏の勝利が予想される。しかも米国は石油消費量では依然、世界最大だ。米エネルギー情報局(EIA)によると、2019年はガソリンだけでも国内消費量が日量930万バレルと、世界の石油需要全体の1割近くに上った。
バイデン氏が自動車の電動化を推進すれば、大きな変化がもたらされる可能性がある。
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