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2020.8.25-4(2)

2020年08月24日 (月) 15:42
2020.8.25-

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【FINANCIAL TIMES】
バイデン氏の愛車と決意
エネルギー・エディター デビッド・シェパード
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(6ページ)
2020/8/24 2:00

 米民主党の大統領候補のバイデン氏は、歴代で最も環境に優しい大統領になりたいと考えている。それでいてアメリカ車の典型のような高排気量の1967年式「シボレー・コルベット・スティングレー」もこよなく愛している。

この2つは相矛盾するように思える。バイデン政権の誕生による石油市場への影響を探ろうとしている業界関係者は、同氏がSNS(交流サイト)で流しているコルベットの動画から微妙な真意をくみ取った方がいい。

◇◇ 

 最初の結婚時に父親が贈った深緑色のこの車は実に美しい。自動車メーカーが燃費を大して気にかける必要がなかった時代の産物でもある。バイデン氏がこのコルベットを紹介したのは環境政策の公約を反自動車キャンペーンではなく、業界活性化の機会として打ち出したかったからだろう。

 動画の中で同氏は「(自動車は)米国を象徴する産業だ。電気自動車(EV)へ移行すれば、21世紀も市場は我々のものになると信じている」と語っている。
米自動車業界はEV市場を軽視すれば、欧州勢やアジア勢の後じんを拝することになるかもしれないと気づいている。米国の車社会と石油需要の見通しがともに変わる日は案外近いかもしれない。

 国際的に見ると、バイデン大統領の誕生で石油業界が最も長期間影響を受けそうな変化は、米国が温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」に復帰することだろう。それで気候変動問題は解決しないが、地球規模で温暖化ガスの排出削減が進まない要因が一つ解消する。

 市場への影響では、米国の対イラン政策の転換が考えられる。米国が18年に離脱したイラン核合意に自ら復帰すれば、国際市場に出回るイラン産原油が増えることになる。石油業界全体で設備投資が減っているため、イラン産原油は数年後に発生し得る市場の供給不足を補うのに役立つだろう。

 バイデン政権では、トランプ大統領を支援してきたサウジアラビア政府との間で緊張が高まるかもしれない。サウジは中国への接近を考えそうだが、中国政府は国内の石油需要の一段の拡大で、米国以上に価格に敏感だろう。

 だが最も顕著な変化はやはり米国内で起こるに違いない。バイデン氏のあの緑色の愛車は単なる懐古趣味ではなく、決意表明と受け止めるべきだ。

(19日付)


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