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〈オピニオン〉 ポストコロナ時代の国際情勢を巡って
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院
ケント・カルダー副学長
日米で医療安全保障の強化を
米ジョンズ・ホプキンス大学の統計によると、新型コロナウイルスの感染者が全世界で2200万人、死者は79万人を超えました。同大学の高等国際問題研究大学院(SAIS)では、公衆衛生大学院と連携し、新型コロナウイルスが国際情勢にどのような影響を与えるかを分析しています。ポストコロナ(コロナ後)の時代における日米関係について、米国きっての知日派で、SAIS副学長のケント・カルダー博士に聞きました。
(聞き手=樹下智記者)
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米政府はコロナ危機による経済・社会の混乱を緩和するため、2兆ドル(約210兆円)規模となる第1弾の景気刺激策を講じました。現在、1兆ドルから3兆ドルになる第2弾の景気刺激策が連邦議会で議論されています。民主党と共和党が歩み寄れるかが焦点です。
昨年の米国の軍事費は7320億ドル(約77兆円)で全世界の約4割を占めますが、コロナ危機による財政出動の規模だけを見ても、医療安全保障がどれほど不可欠であるかは明白です。
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――日本の新型コロナウイルス対策はどう見ていますか。
カルダー 日本は主要先進国の中で、コロナ危機による打撃が最も少ない国です。さまざまな要因があると考えられますが、欧米諸国と比べて、人口当たりの死者数は圧倒的に少ない。現在、感染者が急増していますが、少なくとも、毎日1000人規模の犠牲者が出ている米国から見れば、日本は独自の対策で感染抑止に成功している国の一つです。
初動対応の遅れはあったかもしれませんが、日本には失敗から学ぶ強さがある。日本のクラスター対策や、必要な病床数などを事前に予測する危機管理計画は、とりわけ第2波を懸念する米国にとって、参考にすべき施策だと考えます。大多数の国民が専門家の意見を尊重し、マスクを着用し、身体的距離を保つ努力を怠らない点も、米国は見習うべきです。ジョンズ・ホプキンス大学では、こうした日本の感染症対策の特長に関する研究を進めています。
●構造協議で知見を共有
――SAISが発表したリポートでは、「コロナ危機が国際システムにおける日本の役割をどう変えるのか」が重要な課題であると結論しています。
カルダー 日本は世界第3の経済大国であり、最大の債権国です。コロナ危機による打撃が、他の主要先進国と比べてまだ少ない日本が、国際社会の安定のために期待されている役割は大きい。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で深く傷ついた世界にあって、医療、経済、外交の分野で、他国をリードできるかが注目されています。また、日米が協力して、医療安全保障を強化していくべきです。
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――ポストコロナ時代の国際社会はどのような姿になるのでしょうか。
カルダー 「健康シルクロード」構想の後押しもあり、「一帯一路」構想が加速度を増し、中国と特に欧州の関係が深化するでしょう。中国を中心にユーラシア大陸が統合されていくのが、今後の国際情勢の趨勢となりつつあるでしょう。
主要先進国は医療安全保障の分野においても連携を強め、途上国支援を進めるべきです。日本には、国際協力機構(JICA)などが長年取り組んできたように、途上国における医療支援の豊富な実績と経験があります。
米国と日本は自由世界の二大経済大国であり、何より、これまで培ってきた相互理解や共通性があります。2011年の東日本大震災の際、米国が積極的に被災地支援を行ったのは、日本が同じ価値観を共有する友人だと感じていたことが大きかった。危機の時にこそ、こうした信頼関係を基礎にした、互いに助け合う努力が必要不可欠です。戦後最大級の危機であるコロナ禍も、例外ではないでしょう。
【取材メモ】「日本製のマスクは心地がいい」と、オンライン取材で画面越しに着けて見せてくれた博士。この20年間で、半年以上も訪日していないのは初めてだという。「日米関係といっても人間の絆が根本」と。危機を共に乗り越えたいとの強い思いを感じた。