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日本、遠い金融立国
厳しい税制、優遇に慎重論 香港人材受け入れに壁
日本経済新聞 朝刊 経済(5ページ)
2020/8/18 2:00
日本がめざす金融立国が遠い。中国の国家安全維持法で揺らぐ香港から高度人材を呼び込もうと政府・与党内で浮上した税制優遇案には、慎重論が早くも渦巻く。海外に比べた所得税や相続税の負担の重さを和らげる道筋は見えない。外国人家族が暮らしやすい生活環境の整備も遅れている。
このほど金融庁は内々に2021年度の税制改正要望の素案をまとめた。資産運用会社の法人税軽減や、役員報酬の損金算入制限の緩和など現状の課題に沿った内容だ。
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例えば運用成績と連動する役員報酬は現在、上場企業でなければ損金(経費)と認められない。先進国では珍しい仕組みで、金融機関のアジア部門トップらが日本を避ける一因とされる。
「ネバー・ダイ・イン・ジャパン(日本では死ねない)」。日本の税制では海外資産まで広く網をかける相続税も世界の金融界で評判が悪い。そこで金融庁は非永住の高度人材に限り、入国時点の国外資産に課税しない特例案を検討する。
本丸の所得税については自民党の外国人労働者等特別委員会で引き下げを求める声が上がる。現在、1千万円の課税所得に対する日本の税率は33%と、シンガポールの15%や香港の17%に比べ高い。1億円の場合は日本は45%、シンガポールは22%、香港は17%とさらに差が広がる。金融所得に限れば日本の15%に対してシンガポール、香港は非課税だ。
一国二制度が事実上崩れた香港は国際金融センターとしての地位が揺らぐ。アジアの金融ハブとして東京の存在感を高めるチャンスで、改革の機運は再び盛り上がっている。しかし香港情勢が追い風となるはずの一連の税制改正の構想が実現するかは不透明だ。
金融庁の素案には政府内で異論が噴出し、修正作業が始まった。もともと業種を絞った優遇策は公平性を大原則とする税の世界にはなじみにくい面がある。特に金融人材については「金持ち優遇」との見方がつきまとってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で経済が打撃を受ける現状ではなおさらだ。
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課題は税制だけではない。「なぜこれほど厳しいんだ」。ある香港の金融人材は日本の行政書士に不満をぶつけた。今の在留資格制度は家族以外の帯同を1人しか認めない。海外のように家政婦と運転手をそれぞれ雇う普通の生活が送れない。家政婦が自身の子供を連れてくるのも難しい。
世界で活躍する金融人材にとって魅力的な教育機関が日本に少ないといった声も聞こえる。いずれも十年一日の課題だ。金融立国や国際金融都市の構想は過去に何度も浮かんでは消えてきた。