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【迫真】アパレル大量閉店時代(1)
見限られた日米の名門
日本経済新聞 朝刊 総合1(2ページ)
2020/8/18 2:00
●レナウンは主力紳士服ブランド「ダーバン」を売却する方針だ
レナウン、さよならセール――。8月1日、東武宇都宮百貨店(宇都宮市)で、紳士服「インターメッツォ」や婦人服「シンプルライフ」などレナウンブランドの店が最終セールを終えると一斉に閉店した。だが、レナウン本社の担当者はセールはもちろん閉店さえ知らなかった。「社内が混乱し、誰もコントロールできていない」
かつて売上高で日本一のアパレルだった名門のレナウンだが、いまやリストラ策の決断はおろか、重要情報の共有すらままならない。
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東京地裁に民事再生法の適用を申請し、事実上破綻した5月15日の直後。前会長の北畑稔はワールド社長の上山健二(現会長)に電話をかけた。「レナウンの面倒を見てもらえませんか」
北畑はスポンサーがすぐに見つかると楽観視していた。自分たちは100年超の歴史を誇る名門アパレルだ――。スポンサー候補には全てのブランドと雇用の維持が前提と伝えたが、その自信と世間の評価には大きな開きがあった。
かつて20〜40代の憧れだった紳士服「ダーバン」やインターメッツォ、シンプルライフの主要顧客は60代になった。ブランド力が落ちる中、強気な価格設定も変わらなかった。「今のレナウンを引き受けるのは難しいな」。こう周囲に漏らした上山は申し出を断った。
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7月、米国でも紳士ブランドとして200年以上スーツを提供していた名門ブルックス・ブラザーズが経営破綻した。
「もう何年も買っていない」「在宅勤務でもうスーツはいらないよ」。SNS(交流サイト)には突き放すような書き込みが並んだ。
保守的なスタイルと機能性を備えたブルックスのスーツはオフィス勤務者に支持されたが、変化への対応が遅れた。
1990年代以降、ジャケット不要の「ドレスダウン」が普及しスーツ離れが広がった。調査会社スタティスタによれば、米国の紳士スーツ売上高は2012年に約25億ドル(約2600億円)あったが、20年には21億ドルまで減る見通しだ。
ブルックスもポロシャツなどカジュアル品を増やしたが、ファンは「品質の劣化」とみなした。ネット通販への対応も遅れた。「とどめを刺したのは新型コロナウイルスだが、破綻は必然だった」。大手商社幹部はこう分析する。
「これ以上賃料は下げられません」。6月、女性向けブランド「セシルマクビー」を運営するジャパンイマジネーション会長兼社長の木村達央は出店する商業施設の責任者から伝えられた。
「もうブランドは続けられないな」。悟った木村は7月20日、90年代から10〜20代女性のあこがれで平成アパレルの代表格だったセシルマクビーの全店閉店を発表した。
06年度のピークから時代の変化に合わせようともがき続けたが販売減は止まらない。そこに新型コロナが襲った。もはや賃料削減など小手先では対応できなかった。「規模が大きいだけのブランドはもう生き残れない」
(敬称略)
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ファストファッションやネット通販の台頭に加えて、新型コロナの影響でアパレルはかつてない危機下にある。業界に活路はあるのか。最前線の動きを追った。