座標軸(公明)
2020/08/16 2面
危険な猛暑が続く。熱中症に厳重警戒だ。熱中症は高温多湿により生じる健康障害の総称◆江戸時代は「霍乱」「中暑(暑気中り)」と呼んだことが貝原益軒の健康指南書『養生訓』に記されている。気温は今ほどでなくても、炎天下の農作業、炭焼き、鋳造など高温の職場環境での発症は多く、死者も出た◆霍乱とは、もがいて手を激しく振り回す意味の「揮霍撩乱」の略。「鬼の霍乱」という諺は、健康で鬼のように頑強な人が珍しく病気になること。それほど油断ならない病だった。その後、医師でもある文豪・森鷗外(本名・林太郎)が明治30年に発刊した共著『衛生新篇』で初めて「熱中症」という言葉を使った◆お盆を過ぎると夏バテへの注意も肝要。屋内外の寒暖差による自律神経の乱れ、水分・ミネラル不足、胃腸の乱れなどが原因で倦怠感、食欲不振、無気力などに。小まめな水分補給、バランス良い食事、十分な睡眠に努めたい◆江戸時代の夏の飲み物と言えば麦茶と甘酒だ。俳句で甘酒は夏の季語とされる。近年も甘酒(米麹)の効用が注目され始め「飲む点滴」と言われるようになった。「江戸時代にはミネラル分の存在は知られていなかったが、庶民は体感として効果を理解していた」(酒井シズ『まるわかり江戸の医学』ワニ文庫)と。