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【FINANCIAL TIMES】強権より無策憂う米国民
USポリティカル・コメンテーター ジャナン・ガネシュ
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(6ページ)
2020/8/12 2:00
動詞で始まる3語のスローガンは、ポピュリスト(大衆迎合主義者)の決まり文句だ。「テーク・バック・コントロール(支配権を取り戻せ)」と「ビルド・ザット・ウォール(あの壁を建てろ)」は2016年に、英米両国のポピュリスト運動で見事に奏功した。
指導者はひとたび権力の座に就くと、次第に冗長になりがちだ。取り巻きが辛抱強く耳を傾けてくれるからだ。しかし、最近特に大きな反響を呼んだトランプ米大統領のツイートは3語の形式を守っていた。「オープン・ザ・スクールズ(学校を開けろ)」と大統領がツイッターに投稿すると、24時間で40万件ものリツイートがついた。
お気づきのように、こうした訴えは権威主義の対極にある。だが、それを言えば、新型コロナウイルスに対する最初の反応もそうで、トランプ氏は封鎖などを決断するのが遅く、マスクの着用を促す、あるいは尊重することさえも遅かった。
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有権者がトランプ氏の不支持を表明しているのは、同氏が民主主義社会の規範を踏みにじっているからではない。厳格だという評判にもかかわらず、トランプ氏が事態を掌握できていないことが許せないのだ。独裁的な形式と手法を取りつつも、独裁を正当化する「国民が守られている感覚」を提供できていないことが問題の本質だ。
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有権者がトランプ氏の不支持を表明しているのは、同氏が民主主義社会の規範を踏みにじっているからではない。厳格だという評判にもかかわらず、トランプ氏が事態を掌握できていないことが許せないのだ。独裁的な形式と手法を取りつつも、独裁を正当化する「国民が守られている感覚」を提供できていないことが問題の本質だ。
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バイデン氏はこれを知っているだけに、自身がローマ皇帝のような強権的な指導者を正すリベラル派としては選挙運動は展開していない。ただ単に、政策をより効果的に遂行できる人物であることをアピールしている。同氏は政策綱領で「短期的な手当制度を改革して雇用保険を拡大する」計画などを掲げ、有権者の気持ちを落ち着かせるだろう。
バイデン氏によるトランプ氏への攻撃は、トランプ氏が法の支配を無視したり振りかざしたりしたことではなく、今年1月頃からのコロナウイルスに対して無頓着であることに焦点を絞っている。「バイデン大統領」が独裁者のように振る舞わないことは言うまでもないだろう。ただし、有権者がそれを根拠にバイデン氏を選出するふりをするのはやめよう。