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【FINANCIAL TIMES】公的基金運用者の苦悩
国際金融担当チーフ・コレスポンデント へニー・センダー
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(6ページ)
2020/8/10 2:00
政府系ファンドや公的年金基金はなるべく政治と距離を置きたがる。だが感染症が容易にまん延する今の時代は簡単ではなくなってきた。新型コロナウイルスが世界中の企業に壊滅的な影響を与える中、運用担当者は将来の退職者や次世代のための膨大な資産に政治家が熱い視線を注いでいるのを感じ、戦々恐々としている。
韓国の世界経済研究院が先ごろ開いたオンラインイベントでは、世界の主要な公的基金の担当者が参加し、胸中を語り合った。
各国政府はウイルスの猛威に対処するため、大幅な財政出動を余儀なくされている。その財源として政府は国債を増発し、中央銀行はゼロ金利政策と債券の大量購入などによる大規模な金融緩和を進めている。この結果、中銀の独立性が侵されているとの批判が起きた。公的資金の運用担当者は「あすは我が身」と案じている。
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韓国ソウルの弘益大学の辛星煥教授は、約6000億ドル(約63兆円)と世界有数の規模の年金資産を持つ韓国国民年金公団などの投資基金は「政治的な干渉を受けやすい」と指摘する。独立性を高めようにも同公団の場合、韓国の国会と政府から定期チェックを受けている。コロナ禍で運用担当者の裁量の余地は一段と狭まった。
これは各国の基金運用者に共通の悩みだ。約3000億ドルの資産を運用するカナダ年金制度投資委員会でも、アジア太平洋地域を統括するスイ・キム氏は「景気の減速で掛け金収入が減る一方、低金利で投資収益が低下している。政府から『国のための協力』を求められた場合に備え、流動性を確保しておく必要もある」と話す。シンガポールの外貨準備高の一部を運用するシンガポール政府投資公社「GIC」のケビン・ボン氏も、政府から支援要請がくるかもしれないと予想していた。
年金基金は国民の高齢化で保険料収入が減る半面、給付は増えるという資金の流れの変化にも対応しなければならない。
辛氏の試算によると、韓国国民年金公団では向こう10年間は資金は流入超だが、その後は急速な流出超となる。公団の運用責任者の安孝濬氏は、こうした点などを踏まえ「リスク資産の比重を高めざるを得ない」と考えている。
安氏は投資を多様化する以外、ほぼ選択肢はないという。「つまり海外資産や(未公開株式、不動産などの)オルタナティブ資産への投資を増やすということ」で、公団は2024年までに、海外資産の比率を現在の35%から50%に引き上げる計画を立てている。
このような状況で政策立案者から当てにされるのは全くありがたくないことだ。急に現金を用意する必要があるかもしれないとみて、短期で流動性が高いが利回りは事実上ゼロの国債などへ投資を増やせば、資産配分計画がゆがむ可能性すらある。政治家はこうした基金を眼前の危機に利用することで生じる長期的な影響を慎重に考えた方がいい。
(7月29日付)