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【未踏に挑む】人・自然重視の資本主義に
仏ダノン「使命を果たす会社」に ファベール会長兼CEO
日本経済新聞 朝刊 総合1(2ページ)
2020/8/9 2:00
フランスは2019年に新法を制定し、利益以外の目標を達成する責任を負う「使命を果たす会社」を新たな会社形態に取り入れた。上場企業で第1号となったのが仏食品大手ダノンだ。エマニュエル・ファベール会長兼最高経営責任者(CEO)に、目指す会社像やウィズコロナの時代の経営について聞いた。
――6月の株主総会で定款変更が認められ、「使命を果たす会社」になりました。どういった点が変わるのでしょうか。
「定款にESG(環境・社会・企業統治)に関連する新たな4つの目標を盛り込んだ。(1)製品を介した健康の改善(2)地球資源の保護(3)将来を社員と形成すること(4)包摂的な成長――だ。取締役のメンバーはこれらの目標に対して責任を負う」
「外部の有識者や従業員の代表からなる10人の独立した『ミッション委員会』が取締役会を監督し、目標を達成できていなければ改善を迫る。株主とそれ以外のステークホルダー(利害関係者)に対する価値創造のバランスをどう取るか指針を示す役割を担う」
「新型コロナウイルスの世界的な流行は、ステークホルダー資本主義を加速させている。企業は従来のビジネス慣行の枠を超え、健康や市民について考えるようになった。『使命を果たす会社』になったことで、ステークホルダー資本主義の時代に繁栄できるようになると考えている」
――株主の反応はどういったものでしたか。
「株主総会では株主の99%が賛成した。資産運用会社は、自らもESGに貢献していると示す必要がある。ダノンに投資することで運用会社もESGを果たせるようになるという意見がある」
◇◇
――長年、環境や社会面に配慮した経営をしています。なぜですか。
「ビジネスは現金で始まり、現金で終わるとみる今の経済モデルは間違えている。近代経済は金融資本で語る癖があるが、人的資本や自然資本も経済活動に活用している。それらを資本と捉え、お返ししないといけないという概念が乏しい」
「実際、現金がなく事業が赤字でも、卓越したアイデアがあれば会社は資金を集められる。企業が破綻するのも資金が尽きるからではない。リーダーがエコシステム(生態系)への自信をなくすからだ。ビジネスは人で始まり、人で終わる」
――企業統治の仕組みを変えています。
「18年4月から『一人、一声、一株』の経営を始めた。世界の社員10万人に一株ずつ配って株主になってもらい、社員代表の26人が取締役に意見する機会をもうけている。取締役にも従業員代表を入れている。新しい世代が職場で起業家精神を持って働きたいと考えているのも大きい」
――目指す会社像を一言で表すと何でしょう。
「サーブ・ライフ(生命に尽くす)だ。社会があり、経済活動をした結果、お金が回るという考え方ではない。まず自然があり、経済を回すときには中心にお金ではなく人間がいる。製品を作るには植物や土、水などの自然が必要だ。ここに製品を買ってくれる消費者のほか、製品を作る人、運ぶ人、販売する人がいる。すべての生命を支え、尽くす会社になる」