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【チャートは語る】ドルの信認問う金高値
供給増で価値低下、基軸通貨に試練
日本経済新聞 朝刊 1面(1ページ)
2020/8/9 2:00
新型コロナウイルスの感染拡大で金製品の需要は減ったのに、金の国際価格は連日、史上最高値を更新している。金を買うために支払う米ドルの価値が落ちているのだ。基軸通貨(総合2面きょうのことば)の信認が問われている。
「人々は宝飾品にカネを使う余裕がなくなっている」。文化的に金を好むインドの首都ニューデリー。宝石店を営むアビシェクさんは、客足の少なさを嘆く。
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価格を押し上げているのは投資マネーだ。金を裏付け資産に持つ上場投資信託(ETF)への1〜7月の資金流入量は491億ドル(5.1兆円)と過去最高になった。95%は欧米のファンドが占める。米国の新興取引アプリ「ロビンフッド」経由で若者ら投資経験が浅い層も値動きにつられて金を買うようになった。
市場では「今後1年半のうちに3000ドルを目指す」(米バンク・オブ・アメリカ)との声も飛び出した。実需が乏しいのに金のさらなる上昇を信じて疑わないのは、世界の通貨取引の中心にあるドルの価値が低下に向かうとの見方を強めているためだ。
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コロナショックはドルの基軸通貨としての地位が揺らいでいないことをはからずも示した形だが、世界を支えるための大量供給はドルの信認を問う結果になりつつある。「金の価格が上がっているというより、ドルの価値が落ちている」(野村証券の小清水直和シニアエコノミスト)
米政府はこれまで3兆ドルの経済対策を打ち出し、現在も失業対策の継続などのために新たな財政支出を検討中だ。国債発行を支援するために、FRBは国債を買い続けてドルをばらまくとの予想を強める投資家が多く、米10年債利回りは0.5%と過去最低に低下(価格は上昇)し、金は買われ続けている。
コロナ感染は、いったん落ち着いたかに見えた日本や欧州などでも再び拡大し始め、収束が見えない。世界経済の低迷が続くのは避けられず、下支え役としてのFRBの役割は高まりこそすれ、弱まることは見通しにくい。
緩和依存が最終的にドルへの信認を揺るがすことはないのか。7月からのドル安と金の高騰は「先々のリスクに対する市場からの一つのメッセージ」(みずほ総合研究所の野口雄裕上席主任エコノミスト)との指摘が増えている。
(浜美佐、ニューヨーク=後藤達也、今橋瑠璃華)