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【Asiaを読む】米怒らせた中国 外交に変化の芽
豪ロウイー研究所シニアフェロー
リチャード・マクレガー氏
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(8ページ)
2020/8/8 2:00
米国をはじめ多くの国々との関係が悪化する中国の指導部は、疑問を抱き始めているだろうか。表面的には、習近平(シー・ジンピン)国家主席らが軌道修正し、野心的な外交目標を後退させている兆候はみえない。
中国人民解放軍のシンクタンクである中国軍事科学院の周波・名誉フェローは7月27日、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに寄稿した。周氏は米国との対立を、中国の「平和的」な発展への「逆風」とみているようだ。
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かつて改革開放にカジを切った鄧小平氏は、爪を隠して力を蓄える「韜光養晦(とうこうようかい)」という対外政策だった。習氏への批判派は、控えめな外交路線を貫くほうが、中国の国益にはるかにかなうと考えているようだ。中国のような大国が低姿勢を保つのは不可能なのかもしれないが、批判派は習氏を名指しせず、鄧氏の路線を持ち出して隠れみのにしようとしているらしい。
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戴氏は、中国が(米国の)ドアをたたき「米国を追い越し、米国に取って代わり、世界一になる」と声高に宣言すべきではないとも警告している。中国が先走っていることを認めているようだ。
戴氏は、中国は日本に目を向けるべきだという。日本は中国よりも、他国に追い抜かれそうな米国の不安をよく理解しているとみているのだろう。貿易問題で米国の圧力にさらされている中国の政府高官は近年、米国への対処法について、日本の関係者に助言を求めているようだ。
日本には貿易摩擦で米国の圧力をかわすために使った手法があるが、中国への重要な助言は「米国を怒らせるな」ということだろう。もちろん日本と中国は異なる。日本は(軍事面などで)米国に保護される立場でもあり、不利な立場に置かれていたといえる。中国にこうした制約はない。中国は日本よりはるかに大きく、軍はより強大で、政治体制は西側に対する強力な敵がい心に根差している。
中国の野心や鉄の規律などが、軌道修正を難しくしている。中国は既に「米国を怒らせてしまった」ため、現状の変更は容易でないだろう。
米国だけでなく、歩調を合わせた世界の中国への反発が、当面続くことは確実だ。中国に友好国がなくなる懸念はあっても、各国の反発が、中国の行動に影響を及ぼすかどうか定かではない。