Contents
RSS 2.0

ブログ blog page

2020.8.8-4(2)

2020年08月07日 (金) 14:55
2020.8.8-4

??????????????????????????????????????????????

【エコノミスト360°視点】コロナが米に迫る3つの選択
岩田一政 日本経済研究センター理事長
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(6ページ)
2020/8/7 2:00

 米国の経済活動再開は時期尚早だった。新型コロナウイルスは強靱(きょうじん)だ。突然変異を繰り返し、抗体形成メカニズムも複雑だ。ワクチン開発を年明けと仮定する「標準シナリオ」だけでなく、開発されないケース(日本経済研究センター7月中期予測「悪夢のシナリオ」)も視野に入れ対応すべきだ。
 第2次世界大戦の危機に直面したチャーチル元英国首相は、「危機時の選択は、幾世代かの将来にわたる世界を形成する」と述べた。米国の選択は3つある。

 第1の選択は「分断を深める米国」だ。ニューヨーク大学のトマス・フィリポン教授によれば、巨大テック企業が独占支配力を強めた結果、米国市場は欧州と比べ消費者に不利益をもたらす非競争的市場となった。新規参入企業は抑圧され、個人は「データ奴隷化」する。高スキル人材と低スキル人材の所得格差に加え、コロナ危機下では「在宅勤務が可能な人」と「人との接触が不可欠なサービスを提供する人」の間に、新たな格差が生まれた。

 白人警官による黒人男性暴行死事件は、米国建国以来の「人種不正義」の根深さを浮き彫りにした。トランプ大統領が市民の抗議デモに連邦軍動員を企図したことは衝撃的だ。一部の発展途上国に見られるような「国家と社会の分裂」の深さを示している。

 第2の選択は、米中対立下での「安全保障重視の米国」だ。人工知能(AI)研究者カイフー・リー氏によれば、AIの認知などの分野で、中国はすでに米国を追い越した。その優位性は、幅広いベンチャー企業のエコシステムと、「デジタル独裁国家」とも呼べる中央集権的なデータ収集・管理システムにある。中国は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)を世界に先駆けて導入し、現行の国際金融決済ネットワークとドル本位制度の打破を目指している。

 一方、米国は安全保障の観点から、国家組織が巨大テック企業を巻き込み、すべての個人情報を管理可能にしようとしている。また民主主義10カ国(G7+韓国、インド、オーストラリア)と連携し、中国企業を米国防産業サプライチェーンから完全に締め出すだろう。だが、この「監視資本主義」が、適切かつ民主的な監視メカニズムを欠けば、個人のプライバシーが脅かされることになる。欧州司法裁判所が欧米間の個人データ移転取り決めである「プライバシー・シールド」を、「欧州連合(EU)一般データ保護規則(GDPR)」違反としたことは、示唆的だ。

 第3の選択は「社会的課題を優先する米国」だ。人権および市民の権利確保と政治参加拡大は民主主義を深化させる。民主主義とプライバシー保護を両立させるデジタル社会の下で、人種不正義、不平等拡大、地球温暖化などの課題解決を目指すことになる。巨大テック企業の過大な独占力は是正され、米国市場は再びダイナミズムを取り戻す。

 米国の深い分裂の中から、ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所(CSIS)所長が注目する「新たな政治ダイナミズム」が生まれることを期待したい。


トラックバック

トラックバックURI:

コメント

名前: 

ホームページ:

コメント:

画像認証: