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2020.8.8-4

2020年08月07日 (金) 14:13
2020.8.8-4

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【FINANCIAL TIMES】英とEUの「特別な関係」
チーフ・フォーリン・アフェアーズ・コメンテーター 
ギデオン・ラックマン
日本経済新聞 朝刊 オピニオン(6ページ)
2020/8/7 2:00

 ロシア政府は、2016年の英国の欧州連合(EU)からの離脱の是非を巡る国民投票で、離脱派の勝利を熱望していた。ロシアのプーチン大統領は、英国がEUから離脱すれば西側諸国の同盟は弱体化すると考えていたからだ。
 だが、ここへ来てプーチン氏の考えは間違っていたように思える。英国のEU離脱は西側諸国の同盟の弱体化どころか、強化につながるかもしれない。英国が離脱したことで、EUは「絶えず統合を深化させる連合」に向けて再び前進しつつある。EUがしっかりすれば、"トランプ後の米国"にとってはより信頼できるパートナーになる。

 長期的には、EUと英国の関係は米国とカナダの関係に似たものに落ち着く可能性がある。カナダは米国の一部になるつもりはないし、英国もEUの一部になるつもりは全くない。カナダも英国も自国の政治的な独立を維持したいため、自国が米国やEUという近くの大国に比べ弱い立場にあることは仕方がないと受けとめている。どちらもバランスを欠いた関係ではあるが、共通の利益や価値観、地理的条件に基づく深い経済的統合や戦略的な協力を通じて、いずれにおいても双方が利益を享受できる。

 今後、どんな展開があり得るかを理解するには、7月17〜21日のEU首脳会議がいかに重要だったかを認識する必要がある。5日間という過去2番目に長い首脳会議を経て、EU首脳らは欧州委員会がEU共通債を発行することでEU全体として市場から資金を調達し、これを原資とする復興基金を設立することで合意した。
 市場から調達される数千億ユーロにも上る資金はまずは、新型コロナウイルス感染拡大による打撃を緩和するために使われる。だが、非常に低い金利でかなりの規模の資金を市場から調達できると気づいたEUは今後、この資金調達力を使い、集団的防衛など様々な野心的な新規プロジェクトの資金を工面できるようになるだろう。

 EU共通債の市場が大きく成長していけば、新たな安全資産を求める投資家らの需要に応えることになるうえ、ユーロの国際的な役割を拡大し、EUの政治力の強化にもつながる。

 EUが長く求めてきた「絶えず統合を深化させる連合」に向けたこの歴史的な前進は、もし英国がまだ加盟していたら実現していなかった。「倹約4カ国」(オランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマーク)は今回の合意を巡り強く反対した。英国がまだ加盟国だったら、断固として合意に応じない姿勢を期待したはずだ。だが英国離脱後のEUでは、仏独連合の動きを止めるのは再び難しくなった。従って、共通債の発行は、より緊密な政治同盟へと向かう動きの第一歩となる可能性がある。次のステップは、共通債の裏付けとなる共通税の導入だ。

◇◇

 米国はますます中国との対立を深めているが、賢明な政権ならEUが結束の強化を図ることの利点に気づくはずだ。トランプ米大統領は、EUを危険なライバルとみているため、そうは考えないだろう。だが民主党のバイデン氏が大統領になれば、新政権は米国の同盟関係の再構築を重視するだろう。

 バイデン陣営は、米国が自国だけで世界秩序を支えきれなくなっていることを知っている。強化されたEUを第2の柱として、もっとバランスの取れた西側諸国の同盟関係を構築することは、「唯一の超大国」だけでやっていくより魅力的な選択肢のはずだ。特に米国が欧州に長年求めてきた「負担の共有」に対し、EUが新たな財源の一部を欧州の防衛力強化に投じて応えることになればなおさらだ。

 一世代前であれば、米国は統合深化を進めるEUを自分たちの大きなライバルになるとみなし、恐れたかもしれない。だが、そうした欧州に関する考え方は、もはや米国1強時代の過去のものだ。EUの政策立案者の間では、今や欧州の集団的利益に対する長期的な脅威は、中国とロシア、そして中東とアフリカの不安定化だとする見方が広がっている。あと数カ月で米国に信頼に足る大統領が誕生すれば、新政権はEUにとってこうした問題に立ち向かう上で不可欠なパートナーとなる。

◇◇

 では、英国はこの大きな構図の中でどんな役割を果たすのか。それも徐々に明らかになりつつある。英国の離脱後に関するEUとの交渉は、まだ最大の難関が待ち受ける。「合意なし」という事態もあり得る。たとえ合意に達しても漁業権や金融に関する論争は長期化する可能性がある。

 だが、EUと英国の新たな関係は最終的に落ち着くはずだ。欧州を最も敵対視する離脱派であっても、EUが英国の利益と自由に対する主たる脅威ではないと悟るだろう。むしろ、ドイツやフランスをはじめとするEUの民主主義諸国は、欧州だけでなく、独裁主義的な国や脆弱な国などの問題に取り組むうえでも英国にとって欠くべからざるパートナーとなる。

 一方、EUとしてはさらに力と自信をつければ、英国の離脱を欧州統合プロジェクト崩壊の第一歩だ、などと恐れる必要はなくなる。従って英国との新たな関係構築を進める上で過度に身構える必要はなく、もっとクリエーティブな発想ができるはずだ。

 長期的には、英国は米国と既に築いてきた「特別な関係」を補強すべく、EUと新たな「特別な関係」を築くことを目指すべきだ。米国とEUという2つのパートナーシップを強化できれば、英国は再生を果たした西側同盟の中心に返り咲くことができる。

(4日付)


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