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2020.8.5-4(2)

2020年08月04日 (火) 13:18
2020.8.5-4

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【The Economist】
グーグル「中年の危機」克服なるか
日本経済新聞 朝刊
2020/8/4 2:00

●グーグルは創業時の機敏性や革新性をどう維持していけるのか、岐路に立たされている=ロイター

 米グーグルは誕生から21年しかたたないが、今「中年の危機」に直面している。そういう状況に陥った人間にありがちなように、表面上は全て順調に見える。同社の検索エンジンは毎日60億件の要求を処理し、傘下のユーチューブには1日当たり49年分の動画が投稿され、Gメールでは約1000億件の電子メールが日々やり取りされる。オンライン広告市場での支配的な地位により、グーグルの持ち株会社アルファベットは2019年に340億ドル(約3兆6000億円)の利益を上げた。
 こうした中核事業の他に、人工知能(AI)や量子コンピューター、自動運転技術でも世界をリードする。同社のスンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)は7月29日、米IT(情報技術)大手のアマゾン・ドット・コムやアップル、フェイスブックのCEOとともに、ワシントンでの米議会下院の公聴会に出席し、独占的な地位を利用して巨額の利益を上げていて規制が必要と考える議員から質問攻めに遭った。だが、グーグルにとってこれで一体何が「危機」だというのか。

◇◇

 老化の兆候はグーグルの事業の成熟化や企業文化の変化、政府との関係のもつれに表れている。まず事業からみよう。グーグルは検索とオンライン広告ツールの市場をほぼ独占しており、成長の余地が乏しくなっている。検索広告の市場シェアは約90%だ。他の収益源を発掘するのは困難だ。アルファベットは、自動配送用ドローンやロボットなど「ムーンショット」と呼ぶ野心的プロジェクトに数十億ドル規模で投資してきたが、どれも大きな成功には至らなかった。今後も成長を続けるには、クラウドコンピューティングや企業向けソフトやサービスなど、テック大手のライバルがひしめく分野に攻め込んでいかねばならない。

 企業文化の問題はより漠然としているが、普通ではない企業気質を誇るグーグルにとって事業同様に緊急性が高い。創成期の飛躍的な成功を支えた自由奔放な精神は今やリスクになっている。大規模な組織ではうまく機能しないのだ。現在のグーグルは12万人近い正規社員とそれを上回る非正規従業員を抱える。従業員数の増加に伴い、必ずしも同じような考えの社員ばかりでなくなると、ボトムアップで物事を進めるのがより難しくなり、ジェンダーを巡る方針から社員食堂で肉料理を出すべきか、警察にグーグルの技術を売ることの是非に至るまで、あらゆる点が論争となった。

 若さが失われた第3の兆候は、当局から反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いを向けられている点で、これはかねて不可避とみられていた。巨大テック企業に成長すれば政府との関わりも増える。グーグルにとって政府はロビー活動の対象であり、顧客であり、規制当局でもある。米司法省はグーグルのオンライン広告事業を詳しく調査しており、近く反トラスト法違反で提訴する可能性がある。巨大テック企業が事業を拡大して競争を選んだとしても、追及は緩みそうにない。むしろ力をさらに広げる兆候と当局は捉えるかもしれない。

◇◇


 複合企業モデルに傾注するのが解決策でないなら、正反対の方法はどうだろうか。一部の部門のスピンオフ(事業の分離・独立)や売却、撤退によって株主に資金を戻す手法だ。投資家は喜ぶだろう。ある試算では、アルファベットの時価総額は各部門の評価額の合計より1000億ドル低いという。ユーチューブをスピンオフすれば、企業価値の向上だけでなく、ネット広告市場の競争を激化させ、規制当局にも受けが良いだろう。ユーチューブはコンテンツの大半がユーザーによる投稿で無料で視聴できるため、米動画配信サービスのネットフリックスを評価額で上回る可能性がある。

◇◇

 グーグルも自社が最も得意なことを認識し、それを新しい分野に応用できるだろうか。自社の使命としては、消費者が個人情報を対価に商品やサービスを購入できるシステムの構築や、世界が直面する諸問題のAIによる解決、ネットで動くガジェットのデータ処理などだが、いずれかに絞るとよい。今はほぼ全ての分野に手を広げている。規律の緩さは意外な革新を生むこともあるが、それ以上に活力を低下させる。グーグルが進むべき最良の道は、中年の危機に悩む人たちへのアドバイスに似通う。贅肉(ぜいにく)を落とし、自分にとって大切なことを見つけ、夢を追うことだ。

(8月1日号)

☆「スピンオフ」
経営・経済(ビジネス)分野におけるスピンオフおよびスピンアウトとは、既存の企業や組織(以下、便宜上「親会社」と呼ぶ)の一部を分離し、独立した別の企業や組織とすることをさす。親会社との資本関係があるなど関係が深い別会社とすることをスピンオフ、親会社との関係が薄いか全くない別会社を興すことをスピンアウトとして区別する。


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