【NAR Exclusive】国民に不信感、支持率急落
韓国・文政権、効かない不動産政策
日本経済新聞 朝刊 グローバルアイ(8ページ)
2020/8/2 2:00
韓国では首都ソウルを中心に不動産価格の高騰が止まらず、政府への批判が強まっている。文在寅(ムン・ジェイン)政権は2017年5月に発足して以来、不動産投資の抑制策を再三にわたって実施してきたが、状況が改善されず、マイホームを諦める人も少なくない。そんな中で、政府高官らが複数の住宅を所有していることが明らかになり、国民が不信感を募らせている。
盧英敏(ノ・ヨンミン)大統領府秘書室長は7月上旬、大統領府の秘書官級以上に対し、複数の住宅を所有している場合は1つだけ残し、それ以外は手放すよう勧告した。複数の物件を持つ政府高官が率先して手放すことで、不動産の投資抑制と価格の安定化を図ろうと政府が6月に打ち出した策だった。
だが、盧氏自身も2つの住宅の所有者で、政治家としての地盤である忠清北道清州市のマンションは売却したが、資産価値の高いソウル市の江南(カンナム)地区にあるマンションは当初、温存していた。
この行動が明るみに出て世間の批判の的となった盧氏は結局、フェイスブックで「国民の目線に立てず申し訳ありません」と謝罪。江南のマンションも手放すことになり、国民からひんしゅくを買った。
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立地や価格などにもよるが、ソウルの新築マンションの場合、販売価格の40%を超える融資が受けられなくなった。販売価格が9億ウォン(約7900万円)を超える物件の融資額は価格の最大20%までとなった。
政府は不動産投資を抑制しようと税制も見直そうとしている。複数の物件を所有する人には固定資産税を最大6%課して不動産を手放すよう促す方針だ。また、購入して1年以内に売った場合は売却益の70%を税として徴収する方向で準備を進めている。
文政権の不動産政策は不評で、支持率も急落している。世論調査会社の韓国ギャラップが発表した文政権の支持率は7月中旬時点で46%と、新型コロナウイルスの感染抑制が評価されていた5月の71%から一気に落ちた。「不支持」と回答した人の約4分の1は不動産政策への不満を最大の理由として挙げている。