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2020.7.22-4(2)

2020年07月21日 (火) 16:52
2020.7.22-

【大機小機】感染症検査 増えない理由


新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから約5カ月、感染状況が違うとはいえ、他国は急速に検査能力を増やしている。それなのになぜ、日本では検査能力がなかなか伸びないのか。

 この状況を理解するには、感染症対策担当者など関係者の置かれた状況を理解する必要がある。感染症の検査をして陽性が出れば当然、患者は隔離しなければならない。対策関係者は一般原則として、検査と隔離は必要最小限でなければならないと考えている。検査にはエラーがつきものだから、健康な人が感染者に間違われ、隔離されてしまうという偽陽性もあり得る。

 健康な偽陽性者を隔離してしまったら、それは大きな人権侵害だ。そのような人権侵害は絶対に起こしてはならない、という信念がある。信念にしたがえば、検査の数も対象者もなるべく絞り込むことが正義である。事前に感染している確率が高い人に対してのみ慎重に検査をすることが正しい、ということになる。

 しかし、偽陽性が出る確率は極めて低い。武漢での全数検査の例では、偽陽性は最大0.003%だった(10万人が検査を受けて偽陽性は3人以下)という報告もある。偽陽性で健康な人が隔離されるとしても、それは1〜2週間、ホテルなどの待機施設にとどまってもらうということで、オンラインなどで仕事も外部との交流もできる。

 推察するに、人権侵害を起こしてはならないという感染症対策関係者の厳格な倫理観は、ハンセン病訴訟などの経験からきている。昔は感染者を隔離することが正義だったが、長い訴訟や責任追及を受けて彼らの正義は反転した。いま、新型コロナ対策で検査と隔離のシステムをどう拡充するかという問題は「感染症対策における正義とは何か」という問題と直結している。

 


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