〈社説〉 2020・7・16
「立正安国論」の提出760年
●エゴを超え自他共の幸福へ
13世紀の鎌倉時代、「立正安国論」を著された日蓮大聖人が直視されたのは、「天変地夭・飢饉疫癘」(御書17ページ)という大災難に喘ぎ苦しむ民衆の姿であった。この悲惨な現実をわが事とし、「胸臆に憤悱す」(同ページ)と同苦し、何としても民を救いたいと立ち上がられたのだ。
「立正安国論」の終盤に、主人が客人に呼び掛けた重要な言葉がある。
「汝須く一身の安堵を思わば先ず四表の静謐を禱らん者か」(同31ページ)
苦悩に満ちた現実を生きる上で、「一身の安堵」を願わない人はいない。しかし、それが他者の存在を忘れてエゴにとらわれたものであれば、結局、自分の安心さえ得ることはできない。一人一人がエゴを克服して「自他共の幸福」を祈り、支え合っていく行動が基盤となってこそ、本当の意味で「安国」――“世界を静穏ならしめる”ことができるのだ。
創価学会は、この「立正安国」の精神を受け継ぐゆえに、これまで幾多の災難の中でも、復興支援のボランティアへの取り組みや、“誰も置き去りにしない”との励ましを推進してきたのである。
20世紀を代表する大歴史家トインビー博士は、池田先生との対談で、「人間一人一人が、それぞれの自己中心性を克服していかなければなりません」と指摘し、そのために宗教の使命を強調した。
「宗教のみが、人間本性の働きのなかにあって、個人的にも集団的にも、自己を克服するよう人間の心に働きかけてくれるものなのです」と。
自己の超克とは、個人における「人間革命」といってよい。と同時に、それは集団的レベル、つまり人類社会の変革をも促すものなのである。私たちが日々、「自他共の幸福」を祈り、広宣流布へ進む実践には大きな意義と使命がある。
きょう7月16日は、大聖人が「立正安国論」を提出されて760年の節目。自分のいる場所から、勇んで「立正安国」への祈りと行動に踏み出したい。