◎人権は「内政干渉」にあたらず(7.14日経)
93年ウィーン宣言
「すべての人権の促進・保護は国際社会の正当な関心事項」。
「人権」は国家権力から個人の自由を確保する権利。
問題は「国内管轄権内にある事項」や「国家が自由に処理しうる事項」の対象範囲である。国際法に詳しい浜本正太郎京大教授は人権・人道問題は「干渉の対象に当たらないというのが通説だ」と説明する。
根拠の一つとなるのは93年に世界人権会議が採択したウィーン宣言だ。「すべての人権の促進・保護は国際社会の正当な関心事項」と規定した。「人権」は国家権力から個人の自由を確保する権利で、「人道」は紛争や災害に遭う人々の守られるべき尊厳を指す。
国際社会は80年代、南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)を「人類に対する犯罪」と批判して経済制裁を発動した。中国で起きた天安門事件にも西欧諸国は経済制裁に踏み切った。
川島真東大教授によると介入する場合は(1)相手国が求めている(2)自国に介入能力がある(3)国際的に承認されている――の3条件を満たす必要があるとの内容だ。
香港国家安全法を巡る米国の対中制裁は「相手国が求めているとの条件を満たさず、やはり中国からは内政干渉と映る」と川島氏は指摘する。
◎【国連IPS=タリフ・ディーン】
世界人権宣言が国連で採択されて60周年を迎える今年、東京に本拠を置く創価学会インタナショナル(SGI)が、「人権教育に関する会議」の開催を呼びかけている。
SGIは、世界190カ国地域、1200万人以上の会員を擁する非政府組織で、提案の会議は市民社会を中心とすべきと訴える。
SGIの池田大作会長は、従来人権問題は主に政府によって取り組まれてきたし、またそうあるべきだと認めながらも、「人権の尊重を政府レベルの議論にとどめるだけではいけない」と述べた。
「人々の現実生活に深く根差した世界共通の『人権文化』として定着させることが重要」と、世界平和を希求する仏法者で著作家でもある池田会長は語った。
ゆえに私は、この不安的な状況を打開するために、世界各国のリーダーと対話を重ね、国連への支援を呼びかけてきました。そして、平和提言を通して、国連のこれまでの成果を紹介するとともに、国連を軸に地球的問題群に取り組むための諸提案を、毎年、発表してきたのです。
その上で私どもSGIは、国連諸機関や他のNGOと協力しながら、軍縮や環境などの諸問題に対する意識を喚起し、地球市民意識を啓発するための活動を広げてきました。それらはいずれも、「国連が成功するか否か」といった発想ではなく、国連を有効に機能させるために「我々は何を為すべきか」「何が出来るか」という問題意識と責任感から出発したものでした。
ガンジーの言葉にも「善いことは、カタツムリの速度で進む」とあります。国連の無力を嘆いたり、世界の厳しい現実に冷笑主義に陥っても、何も生まれてきません。肝心なのは、国連の活動を粘り強く支えていく「民衆の連帯」を着実に広げる努力ではないでしょうか。国連を通し、様々な国家と国民が協力し行動するという経験を重ね、智慧を蓄積していくことが、極めて重要です。こうしたことが、遠い百年先、二百年先の人類への最大の遺産となるのではないかと、私は確信しております。
◎東洋哲学研究所の創立者・池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長と、アルゼンチンのノーベル平和賞受賞者・エスキベル博士の対談集。
ラテンアメリカの20世紀。それは、貧困と社会的不公正からの解放を求める人権闘争の歴史であった。エスキベル博士は民衆の先頭に立って、非道な人権抑圧を重ねる軍事政権と戦い、過酷な獄中闘争も体験。「第三の千年」が始まる21世紀を「人権の世紀」とするためには、いかなる哲学と運動が必要なのか、仏教を基調にした平和運動を続けるSGI会長と語り合った。
●エスキベル博士は語る。
「軍事独裁政権は私を捕らえ、虐待し、飛行機からラプラタ川に突き落とそうともしました。人間が人間でなくなり、使い捨てのモノとされる。狂った状態のなかで、3万人もの人々が「消され」ました。しかし私たちは勝ちました。私は明言できます。『抑圧された人々は、いつまでも黙ったままではいない。民衆が目覚め、権利を主張するときが必ず来るのだ!』と」
●そして池田SGI会長は語る。
「民衆が強くなる。賢くなる。主人公になる。それこそが《新時代》です。虐げられ苦しむ庶民のために、私どもは断固、戦い続けてまいりました。傲慢な権力は民衆を分断しようとします。だからこそ民衆は団結しました。権力に迎合してきた日本の宗教の歴史を転換し、『憎悪から慈悲へ』『暴力から非暴力へ』と転換しゆく民衆の一大連帯を築いてきたのです」