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◎〈文化〉イマジュリィに表れた大正〜山田俊幸さん
(日本近代文学研究者)
◆子どもと女性を尊重〜「生の飛翔」
(エラン・ヴィタール)に寄せた共感
大衆に向けて大量に出された印刷物・版画「イマジュリィ」は、時代を映し出す。大正を代表する画家の一人・竹久夢二は、同時代を生きる子どもと女性を新鮮な感覚で捉え、その姿を多彩に描いた=山田俊幸さん提供
●夢二たちの視点
「大正は、子どもと女性が尊重された時代である」「小さなものへの愛に満ち、先進性に富んだ魅力的な時代だった」――。以前、本紙への寄稿でこう述べたことがあります。
今から100年前の大正(1912〜26年)の「イマジュリィ」(フランス語でイメージ図像の意、大衆に向け大量に出された印刷物・版画の総称)を見ると、この時期、子どもと女性を対象にした雑誌が相次いで創刊されたことが分かります。「少女の友」「子供之友」「赤い鳥」「金の船(後に「金の星」に改題)」「おとぎの世界」「コドモノクニ」など、子ども雑誌と少女雑誌だけでも枚挙にいとまがありません。
こうしたイマジュリィを通して、それまでになかった新しい子ども像、女性像を創ったのが、例えば、日本児童文学の開拓者である巌谷小波であり、画家の竹久夢二です。小波はドイツの文学や民俗学を参考に、日本の民話を再話して「お伽噺」「昔噺」を著述。この後に続く童話の時代を開きました。
子どもは、国家や社会が望む大人への準備段階にある存在ではない。さまざまな可能性を持つ存在だと考え、子どもの新しい世界を創り上げたのです。
女学生雑誌や少女雑誌も、その年頃の女の子が純粋に楽しめるものでした。彼女たちが男の子と等しく力を伸ばせるように、と執筆者や編集者が思考と工夫を重ねて作ったことが伝わってきます。
●人間の内面を描く
大正は、法や秩序、ヒエラルキーに基づいて世界を構築する男性原理の主導から、平等や自由、生命の尊厳などの価値を重んじる女性原理の優位へ、社会の在り方が変わった時代ともいえます。
この潮流は世界的な現象でもありました。第1次世界大戦(1914〜18年)のさなか、ロシア(17年)とドイツ(18〜19年)で革命が相次ぎ、ロシア、ドイツ、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国などで帝政が終わりを告げるのです。とともに、東アジアの思想が求められるようにもなりました。タゴールらがヨーロッパの文化を揺り動かしたりしたのです。