◎【人生100年 お金の知恵】相続 不公平感が生む対立
親は資産額・援助内容を明確に
「お母さんの介護を押しつけたのは姉さんでしょう」。亡くなった母の遺産を巡る話し合いでAさんは妹の反論に言葉を失った。遺産は評価額2000万円の自宅のほか、預金など金融資産が1000万円近くあった。母と同居していた独身の妹は、面倒をみてきた自分がすべてを相続すると主張したのだ。
2年前に父を亡くしたときの金融資産は2000万円あまりあった。Aさんは母の介護に必要だとして妹を説得し、母に金融資産をすべて相続させていた。亡くなった母は遺言書を残していなかったため、遺産分割はAさんと妹が協議することになったが、妹は当初「お金は介護で使い果たした」といい、預金通帳すら見せなかったという。
もめる相手は6割以上が兄弟姉妹だ。深刻になりやすいのが父母とも亡くなっている場合。
「どちらかが存命のときは親の存在が歯止めになるが、子だけになると不満が表面化しがち」
寄与分では2019年7月に新設した特別寄与料が注目されている。寄与分が認められるのは法定相続人のみ。このため例えば嫁が義父を介護しても対象外だったが、新制度は他の相続人に財産を請求できるようになった。
相続人の中に亡くなった人から生前にもらった財産がある人がいる場合も難航しやすい。単純に法定相続割合で遺産を分けると不公平になりかねないためだ。特別受益といい、教育資金や住宅資金、結婚のための支度金などが当てはまる。