◎【Deep Insight】新常態が促す政治転換
安倍氏の自民党総裁任期と衆院議員の任期は2021年秋にほぼ同時に切れる。党首の人気が個々の議員の選挙結果に直結しやすい小選挙区制では、選挙の時期が近づけば近づくほど、世論で人気のある候補へと党内の支持は流れる傾向が強い。3カ月後に参院選が迫っていた01年春の自民党総裁選で、小泉純一郎氏が派閥連合では優位に立っていた橋本龍太郎氏を下したのがその典型となる。
早期解散論には政権の求心力を取り戻すだけでなく、「ポスト安倍」争いと衆院選を切り離す狙いもある。仮に今秋、自民党が衆院選に勝ち、安倍総裁が21年秋まで務めた後の総裁選なら、24年秋の衆院議員の任期満了まで3年ある。主流派が派閥連合で推す候補が総裁選を制し、次の解散時期を探る余裕が生まれる。本人の意向にかかわらず、安倍氏の周辺から「総裁4選」や任期延長が出てくる可能性もある。
解散論の背景は、この一点にある。自民党主流派には「この人なら総裁選に勝つ」と確信を持てる候補がみあたらず、安倍氏に代わる「ポスト安倍」が定まらない。時間を稼ぐ必要が出てきたのだ。
7年半にわたる長期政権を支える要素の一つに「ほかに政権を任せたいところがない」との消極的支持がある。コロナ禍は地方自治体の首長という政治家らをクローズアップし、新たなリーダー候補像を印象づけ、有権者に比較の物差しができた。