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濃姫之像

2015年08月16日 (日) 12:10
濃姫之像

◎備えなき城
「あいや、またれよ」
あわてて手をあげたのは、本多平八郎忠高だった。忠高は父平八郎忠豊が先年の安祥攻めで広忠の身代わりに討ち死にしてからあとを継ぎ、まだ二十二歳の若武者だったが、彼は股立ちつかんでひとひざ安芸ににじり寄ると、
「ここではまず織田家との和睦が第一、織田方への使者は拙者がつとめる」

「ーー竹千代どの成人のあかつきまで、この城地は今川家で預ろう」

「まず安祥城の織田信秀が息子を一人生け捕りになさるがよい」


◎雪月花
「おぬし、瓜とこの信長とどちらが好きじゃ」
「両方とも」

「斎藤道三は食わせ者か」
「おお、そなたを年取らせたような、ずるい奴じゃ」
「竹千代はずるくはない。で、嫁御はいくつじゃ」
「十八じゃ」

「すると……すると、嫁御は投げとばすものか」
「竹千代、おれが竹千代を好きなわけがわかったよ」

「小鳥遊びはやさしすぎる。竹千代は籠の鳥ではない。竹千代は、父がなくても、城がなくても大将じゃ」

世の中にうまが合うということばがある。信長と竹千代がそれであった。

(負けるものか!)

「その代わり、お礼に一頭馬がほしい! 大将には馬がいるのじゃ。馬を下され」

「……人間五十年、下天(げてん)のうちをくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり。ひとたび生をうけ、滅せぬもののあるべきや……」


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