徳川家康 (山岡荘八)
『徳川家康』(とくがわいえやす)は、1950年3月から1967年4月まで北海道新聞・東京新聞・中日新聞・西日本新聞に連載された山岡荘八の歴史小説。ソフトカバー版、講談社文庫版を経て、現在は講談社の山岡荘八歴史文庫(いずれも全26巻)のロングセラーとなっている。
概要編集
主人公の徳川家康の生母、於大の方の縁談から、家康逝去までの七十余年が描かれている。完成のために使用した原稿用紙は17,400枚に上る。ギネスブックにおいては、ジュール・ロマン著「善意の人々」(1932年-1946年出版 全27巻)と並び、「世界最長の小説」として記録されている。
山岡は第二次世界大戦中、従軍作家として多くの特攻隊員を取材した経験があった。その際に触れた日本の存続や世界平和への祈りを胸に秘めて散っていった彼らの思いを、徳川家康の欲した「泰平」に重ね合わせて描こうとした。山岡は連載を終えた後書きを、自邸内に設けた特攻隊員を祀る「空中観音」小堂で書き記している。
連載当初は、新興の織田家と超大国である今川家にはさまれ、独立もままならない松平家の苦難と発展を、当時の日本の姿に重ね合わせる読者も多かったという。また、明治以降の一般的家康イメージから大きくかけ離れた「戦のない世を作ろうと真摯に努力する家康」「なんとか大坂の陣を回避し豊臣秀頼を助命しようとする家康」「皇室尊崇の念の篤い家康」は、「狸親父家康」のイメージを改善するのに大きく貢献した。後にはビジネス本としても評判となり、経営者虎の巻のような扱われかたもした。ジャイアント馬場や落合博満、横山光輝など、各界の著名人も愛読したという。
韓国では「大望」という題名で出版され、ベストセラーとなった他、中国でも2007年秋の刊行以来、全13巻計200万部を売るベストセラーになっており、高い評価を得ている。