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江戸川乱歩

2015年06月23日 (火) 00:20
江戸川乱歩

『救い』???(縋(すが)るもの)
◎夫が出征したおとしの惨めと、隣人の熊谷の家庭革命

文字も同じだし、顔の色も同じように黄色い、亜細亜民族の日本人と中国人が血を流し合っている戦場は中国全土へ拡がって行くばかり……日華事変で明けた昭和十四年は騒然と暮れて、昭和十五年になった。

(おとらさん、あたしにも勧めにきて、大変、有難い仏さまだといったけれど、夫婦の仲をいよいよ悪くしたじゃないの。どこに、有難いところがあるのだろう。達っちゃんだけじゃない。あたしだって、あんな物、拝む気はしない……)

?(八軒長屋の人々)
◎八軒長屋の住民のドラマ、発心と実証

嫉妬は毒血(どくち)のような赤いヴェールを心にかける。……嫉妬の起こっている心にかける。安定はない。極端から極端へ走るから、およそ正確な判断とは縁が遠くなる。

「護秘符というのは、日蓮大聖人以来の秘伝で、御法主上人のほかはお作りになれない日蓮正宗の秘法とされているものです。普通の薬ではありません。信心で非常な力の現われる秘薬です」

『福運』???(紙型目録)
◎巌さんの義理の兄弟・平沼が紙型51片を持ち込み、買うように迫る。そこへ牧口先生が現れる

「福運がきた! 福運がきたよ! いよいよ、あなたも一人前になる。これを冥益というんだ。『妙楽』の……末法の初め冥利なきにあらず……という言葉を、よくよく味わいたまえ、はッ! はッ!  はッ!  これは愉快だ!」

『正邪』???(平沼夫妻の入信)
◎おとらが平沼夫妻を折伏、仏立講の本尊を返却

「それ、取るんだ! それがいけないんだよ! そして七百年前から続いている本当の御本尊さまをおまつりするんだよ! 治る! きっと治る! あたしは沢山、治った人を見てきているものな」

『正法の力』???(ふうてんの政)
◎自殺未遂を起こして柴田家で入信した不良の福島政雄の回復、不良への逆戻り

「身体がよくなって、昔の不良が出てきたんだ。しかし、心配することはない。御本尊さまを拝んでいて、悪いことが成功するものか」

?(悲母の鞭)
◎浅草でも新宿でもたかりに失敗し、防非止悪の実証を見せた政雄の発心

….学生が十五、六人、一団になって駈けてくるのが見えた。
(いけねえ!)

背広姿だが、眼つきで判る……刑事が、そこに立っている。
(畜生! 刑事(でか)がいやあがる!)

雪の新潟吹雪でくれるヨ
佐渡は寝たかよ灯が見えぬ……

「美しい声ねえ!」
「惜しいね。歌が季節はずれじゃないか」

(いけねえ! この野郎、講道館だ!)

「あ、は、は……御本尊さまを拝んで、悪いことが出来るものか」

しかし、浅草と違って、新宿の盛場は、瘋癲(ふうてん)の政が羽振りをきかしていた古巣で、……

(可笑しいなあ! どうしたんだろう。 一人も逢わないなんて……)

(新宿の不良が、警察の一斉検挙に遭ったなんて、そんな、新聞記事は見ていないがなあ)

一番、簡単に泊めてくれるところ、そこは警察署の留置場、無線飲食をして突出してもらえば、それでいいのだ。
「いらっしゃい!」
「酒だ。肴は、三品か、四品か、見繕ってくれ」
……
……
……
(おれは眠ったのか)

「おれは一文も持ってやあしないぜ」

「兄さん、この次で、結構ですよ」

……電車道へ向かってふらふらと歩きだすと、彼の眼に、御本尊が見え、柴田の顔が見え、叔母の恵美子の顔もまざまざと見えてきた。
「御本尊さまを拝んでいて、悪いことが成功するものか」

「あんた、叔父さんの親切が分からないの!」
恵美子は絞るような声で物差を振上げ、政雄が驚いて身体をすくませた……その肩をピシッ! と打った。
「あんた! 御本尊さまの有難いことが分からないの! あたしが、どんなに思っているかが、分からないの! なんていう、情けない人……あんた、人間の屑よ!」

……政雄は手を血だらけにして入ってきた。
「叔母さん! 許して下さい! 政雄は真人間になります! 御本尊さまを懸命に拝んで、叔父さんにも、きっと、恩返しをします!」
やくざの仲間で、堅い誓いをする時に、指をつめて、証拠にする……政雄は改心を叔母に見せるために、小指の先を包丁で落としてきたのだった。

http://777fine.web.fc2.com/ninnkaku/toda_hr_youtenn.htm


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