十五 国王トム
「それはけしからん。英国の法律が個人の自由をうばうというのは、どうもいかん。売りたい者には売らせるがいいじゃないか」
十六 宴会
「良民たちよ、満足に思う」
トムは帽子をかぶったまま食卓にすわった。少しも臆する様子はなかった。それというのも、つまりカンテイの一族が、やはり帽子をとらずに食事したからなので、こればっかりはトムの育ちと皇室のならわしとが、まったく一致したただ一点だったのだ。
十七 フーフー第一世
怒りと恥で、小国王の目には涙があふれた。彼は心の中に思った。
「たとえば余が、このものたちにむかって、ひどいひどい仕うちをして、そのふくしゅうにあったのだとしても、これよりはげしいふくしゅうにあえるものじゃない。ーーまして余はこのものたちに恵みをかけてやろうとしたのだ。それにこのやりかたはなんという恩しらずのことだろう!」
国王は胸をかきむしられるような悲しい思におそわれた。
十八 逃げだした国王
「乞食でどろぼうだ。あれはそちの金をだまして取ったうえに、財布まですっている。そちがぜひともこいつの病気をなおしてやりたいというのなら、そちの杖でこいつの肩をうってやれ。そしたらどうするか試してみろ」