第50章
ドン・キホーテと聖堂参事のやりとり、
理路整然なり。
他にも、あれこれ
『名は知らぬが、湖を眺め入る騎士よ、暗黒の湖水の底で幸いがおぬしを待っている。その幸いを手に入れたければ、肝っ玉を示せ。黒煙を上げて燃え盛る液体の真っ只中に飛び込むのだ。そうしなければ、闇の下に広がる飛び切りの摩訶不思議を見る資格はない。七人の妖精の七つの城の内深く潜む謎だ』
第51章
山羊飼が語り、
ドン・キホーテを運ぶ一行が聞く。
嫁入り前の娘には、錠前よりも、見張りよりも、閂よりも、自分自身の用心が一番確かな護りです。
そんな軍人も及ばない激しい一騎討ちを何度も経験して、全線全勝、自分の血は一滴も流したことがない、などと大きな口を叩きました。
娘のほうから惚れたんです。とかく男女の仲は、女が先にその気になれば、たいてい成就します。
レアンドラはそいつを取った上、大好きな父親を棄てました。
その結果、三日後に尻軽女(しりがる)レアンドラが見つかりました。山の中の洞です。肌着だけの裸同然でした。家から持ち出した大枚の金も貴金属宝石の類いもなくなっていました。
あれは、うっかりではない、もともと性質(たち)の悪い女で、蓮っ葉で、尻軽女(しりがる)だったのだ、それもみな女の性(さが)ゆえである、しょせん気まぐれ
第52章
ドン・キホーテと山羊飼の喧嘩。
次いで、鞭打ち苦行者があらわれる。
その為すところ奇怪至極なれど、
ドン・キホーテの骨折りで、
目出度く解明される。
山深くして文士育つ
「……君の幸せのために一肌脱ごう。娘が尼僧院に閉じ込められているなら、……」
「騾馬の口に密は似合わず、猫に小判」とサンチョ。「だけど、そのうち解るさ、おまえ様にも。家臣から、奥方様、と呼ばれる身分になるんだ、びっくりこくな」
碑銘
鳴り物入りのキ印の禿茶瓶(はげちゃびん)が
……
支那もナポリ湾のガエタも掌中(たなごころ)とか。
……
恋も、怒りも、迷いも、心頭より滅却できなんだ。
ソネート詩
……
寄せ来る敵の返り血浴びるは、
おお、勇ましや、ラ・マンチャの男、
獅子奮迅に旗振って空前絶後の手柄を立てた。
叩っきり、ぶった切り、……
サンチョは小柄でもピリリと辛く、
肝っ玉が巨大(でこ)うござって、
騎士の家来数多ある中、
純粋なること無類、
真っ正直なること、
我輩が太鼓判を押して誓うなり。
当今は驢馬を莫迦(ばか)扱いする
思い上がりと高慢ちきの
懇ろ続きのご時世でござるが、
……