第44章
旅籠での出来事。
前代未聞なり。
「拙者が全く手出しも出来ず、されるが儘でいたとは言わさんぞ。魔法にかかっていた、などと言う者があれば嘘つきだ。この身が仕えるかミコミコーナ姫のお許しがあり次第、舌の根を抜いてやるから、覚悟しろ。いざ、勝負、勝負、決闘だ。一騎打ちだ」
第45章
マンブリーノの兜と鞍の真偽。
その検証が決着する。
他にもあれこれ、
真相を余さず伝える。
「何がどう転ぼうと、手前には鞍です。鬣(たてがみ)飾りには見えませんが、どこでもかしこでも強い者が幅をきかせて、いや、長いものには巻かれよ、愚痴はよしましょう、酒も飲まずに言えることではありません、なんの罪でか朝飯にもありついちゃいないし」
第46章
捕方の目覚ましい活躍と
騎士殿の猛烈ぶり。
「殿様、……馬車道であれ、獣道であれ、闇夜の道を嵐の日を厭わず歩き続けたその果てのこと、艱難辛苦の据えに実るはずの甘い果実も、この旅籠でいちゃついてお過ごし遊ばす誰かさんにもぎ取られる、そんな落ちが決まっていて、なんで、わたくしが、ふうふう、せかせか、ロシナンテに鞍をつけ、騾馬に荷鞍を、お馬に飾りを付けなきゃならないのでありましょう。じっとしていたほうがましですよ。己のことは己でやって勝手にお飯(まんま)にありつきゃいいじゃありませんか、そうではありませんか」