第36章
赤葡萄酒の革袋を相手に
ドン・キホーテが剣をふるう。
壮絶なり。
加えて、旅籠での奇妙奇天烈、
珍事件。
「その女には何をしてやっても無駄だ。…」
「私がいつ嘘をつきました」
「まさか、そんな」
「お前をこそと望まれ、口説かれ、心を惹かれるに至ったわたくしは、どれほどまでにお喜び下さるなら、と身をおまかせ致したのでございますが、それが間違いのもととなりました」
「…まことの貴さは、家柄になく、人柄や美徳にあります…」
それが幸いして浮世の煩悶(わずら)いに決着がつき、今、心は天国、晴れ晴れしているのである。