中国の労働事情
1 労働事情の概況
(1) 雇用・失業情勢
中国の総人口約 13 億人のうち、就業者数は、年々増加傾向にあり、2006 年で7億 6,400 万人となっている(図表1)。近年の就業者数の推移をみてみると、都市部では 年々大幅に増加しているのに対し、農村部ではほぼ横ばい傾向にある。2007 年の都市 部の新規就業者増加数は、対前年比 34%増の 1,204 万人と過去最高を記録しており、 今後も短期的には就業者数の増加傾向は続くものと推測される。
しかし、中国の人口動態は、一人っ子政策 10 による出生率の低下と医療や栄養状態 の改善により、「高出生・高死亡」から「低出生・低死亡」に変化しており、少子高齢 化が進んでいる。生産年齢人口(15 64 歳)の総人口に占める比率は 2011 年から低 下に転じ、絶対数も 2022 年から減少、総人口は 2030 年前後に 14.39 億人とピークを 迎え、その後は減少すると見込まれている。
このため、中国最大のシンクタンク中国社会科学院の人口・労働経済研究所長は、 これまで中国の経済成長を支えてきた高い生産年齢人口比率による豊富な労働力と高 い貯蓄率という「人口ボーナス」が得られなくなるとし、無限といわれる農村の余剰 労働力も半数は 40 歳以上であり、都市の労働力に適した青壮年層は既に不足し始めて いると指摘している。
この対策として、?教育・訓練による人的資本の蓄積や改善により労働力の減少 を代替すること、?労働力の移転を妨げている戸籍制度の廃止による労働力の再配 置による効率化を図ること、?計画出産を緩和・廃止することが必要であると提言 している。
10 中国では、1970 年代に、世界一の人口を踏まえ、将来にわたって安定した経済社会とするために、国 をあげて人口増加を抑制する必要性が出てきた。そうした中、1979 年から、「晩婚」、「晩産」、「少生」 (少なく産む)、「稀」(出産間隔を空ける)、「優生」(子どもの質を高める)を主な柱とした「計画出産」 を行う政策(いわゆる「一人っ子政策」)が実施された。子どもは一人が原則であり、第2子以上につ いては、地方政府の許可制となっていたが、現在では第2子の出産は都市部を含めた各地域の実情によ り認められるようになった。この一人っ子政策は、過剰な労働力問題を解決するといった側面もあった。