ここ数年、中国国家税務総局は、財政収入の安定的な確保を目的として、各地税務局による税務調査 を重点施策としているため、企業側は、これまでよりも大きな税務調査リスクにさらされつつあります。
今回のニュースレターでは、中国における税務調査リスクを事前に評価するために必要な知識として、 中国における税務調査 1 の概要を紹介します。
1 税務調査対象の選定 調査対象者は次の方法で選定されます。
1)調査対象システムによる粗選定
納税義務者税負担率などの納税指標値が組み込まれた調査対象システムから調査対象を粗選定しま す。
2)調査指標に基づく絞り込み
税務局が当年度末に立てた翌年度調査指標と統計学的分析に基づいて、一定の調査対象者が絞り込 まれます。
3)告発・指示・情報交換による選定
内部告発を含めた口頭または書面による告発、上級税務局からの依頼、他地域または他国との情報 交換からも調査対象が選定されます。
2 税務調査のプロセス
調査の 実施 調査方法 実地調査、帳簿書類等の点検、お尋ね、口座残高の調査、他地域への調査協力。
調査期間 60 日。
(なお、調査期間を延長する場合は、調査を実施する税務局調査局長に認可を受 けることが必要である。)
調査完了後 5 日以内に、調査官が「税務調査報告書」を審理部門に提出。
審理部門は「税務調査報告書」受理後 15 日以内に、審理報告書を提出。
? 調査対象者に対し、調査結果を報告する。
? 調査対象者の脱税行為が認定された場合には、税収保全措置が執られる。
? 罰金の税収強制執行および司法強制執行を実施する。
? 納税義務不履行の納税義務者に対し、税収強制執行と裁判所強制執行を実施する。
? 資料収集、統計、分析、伝達などの調査に関連する総まとめを行う。
☆お見逃しなく!
調査によって、税収徴収管理法規に関する違法行為が明らかとなり、適切な税務処理への是正措置が 認定された場合には、追徴税金、納付期限、延滞税の算定根拠と納付期限などが定められた「税務処理 決定書」が交付され、事案によっては、1,000 元未満の罰金が課されることもあります。
さらに事案によっては、適切な税務処理への是正措置にととまらず、税務行政処罰の執行が認定され る場合もあり、この場合には、処罰履行方式、期限などが定められた「税務行政処罰決定書」が交付さ れ、1,000 元未満または 10,000 元以上の罰金が課されることになります。
1 ここでいう税務調査は中国語の「税務稽査」のことである。
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