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戦闘の図

2014年06月07日 (土) 20:22
戦闘の図

二の巻

第9章
かたやビスカヤに勇、
こなたラ・マンチャの剛、
竜虎相打つ激闘が終結、幕となる。

命知らずのビスカヤ男と、いまをときめくドン・キホーテ。両者、抜き身を振り翳(かざ)しての勝負である。いずれも大上段、真っ向から唐竹割に切り下げる必殺の構え。

ちらと見せてその気にさせておいて、先が見たけりゃ勝手に捜せ、とはあまりにも酷い。

ある日のこと、我輩はトレドの繁華な小間物屋であるアルカナ通りにいた。

何がそんなに可笑しいのか、と問うと、余白の添え書きが、と言う。何と書いてあるのか、と訊くと腹を抱えた。
「ここですよ。こう書いてあります『名が頻繁に出るこの女、ドウルシネア・デル・トボーソは、豚の脂身の塩漬け作りにかけては、ラ・マンチャで、右に出る者がないとの評判』」

紙束の第一冊目には挿絵が入っている。ドン・キホーテとビスカヤ人の戦闘の図である。

虚言癖が民族の性(さが)であるからだ。アラビア人はわれわれキリスト教徒の宿敵でもある。


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