実務上、出向時期によっては、日中両国において課税されるという二重課税になるケースが考えられる。
たとえば、日本国籍の出向者が、
(1)2014年1月から6月まで毎月1週間ほど中国子会社に出張し、
(2)同年7月1日に中国子会社の総経理に就任し、1年以上長期滞在することになった。
その場合の日本と中国の課税関係は次のようになる。
(1)出国前に年末調整
出向者は1月から6月までは日本の居住者に該当し、7月1日から長期「1年以上の出国予定」が確定することから、7月2日以降は日本の非居住者になる。
そのため、中国源泉所得も含め、中国への長期滞在に出国する前に年末調整する必要がある。
(2)中国で申告納税
一方、中国では「1年以上居住」の有無によって居住者か非居住者かが判定されるので、同年を通じて「非居住者」として取り扱われる。
すなわち、7月2日以後は日中いずれにおいても居住者に該当しなくなるため、いずれかの居住者に対して認められる租税条約で定められた183免税ルールの適用はなく、出向者は、日本では日本源泉所得に対し、中国では中国源泉所得に対し、それぞれ所得税を申告・納付する必要がある。
7月以降の給与に対し、中国では非居住者として中国で納税するとともに、1月から6月までの日本居住者期間内における中国滞在期間分についても、その年の中国勤務期間が183日を超えることになるため、中国で申告納税する必要があるということになる。
(3)二重課税を回避するためには
以上のように、1月から6月までの給与の一部につき、日中両国において二重課税が発生することになるが、いずれの国においても「非居住者」に該当することになるため、いずれの国においても「外国税額控除」を受けることができない。
よって、二重課税を回避するためには、特に、中国に出向する同一暦年に中国へ主張している場合には、「出向時期と今後の予定」をあらかじめ把握しておくことが肝要である。